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業績が悪化した子会社の会計処理

2014.10.14
公認会計士 吉岡 昌樹
  • Q 

子会社の業績が悪化しています。会計処理上、どのような点に留意したらよいでしょうか?


A

グループ経営において子会社経営の成否は重要な課題ですが、子会社の業績が悪化する例も少なくありません。そのような場合、当該状況がかかえるリスクを適切に財務諸表に反映させるために、親会社・子会社のそれぞれにおいてさまざまな会計上の検討事項が生じます。以下、業績が悪化したモデルを時系列に、①子会社の業績の悪化、②再建計画の策定、③再建計画からの乖離(かいり)、④債務超過への転落、⑤解散の意思決定、⑥清算に分け、それぞれの時点における検討事項について留意点を確認してみたいと思います。


親会社・子会社それぞれにおける主要な検討事項を、時系列に沿って表すと、下図のようになります。

(下の図をクリックすると拡大します)

1. 業績の悪化

子会社の業績の悪化は、本業の不振、環境の変化、災害の発生等さまざまな理由が考えられますが、留意すべきは、そのような状況がさまざまな資産の評価にも影響を与え、当該子会社業績の悪化をいっそう加速させる可能性があるという点です。例えば、下記の会計処理を行った結果、子会社株式を減損処理することとなる懸念があることに留意したいと思います。

(1)固定資産の減損

具体的にはまず、業績の悪化が固定資産について減損の兆候に該当し、将来キャッシュ・フローの見積結果によっては、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失の認識が必要になる可能性があります。

(2)繰延税金資産の回収可能性

また、繰延税金資産については、回収可能性を検討した上で将来の課税所得において回収可能な金額のみを計上することが必要ですが、業績の悪化により将来の回収可能性に関する判断が厳しくなる結果、繰延税金資産の取崩しが必要となる可能性があります。

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2. 再建計画の策定

(1)子会社株式の回復可能性・貸付金の回収可能性

一方、親会社においても、当該子会社への投資の評価や融資の回収可能性が問題となります。
すなわち、子会社の業績悪化により当該子会社の財政状態が悪化し、親会社にとって子会社株式の実質価額が著しく低下した場合には、当該株式の減損が必要となります(金融商品会計実務指針第92項)。しかし、親会社が子会社から事業計画等を入手し、回復可能性を十分な証拠によって裏付けられる場合には、減損は不要であるという判断もあり得ます。当該事業計画は実行可能で合理的なものである必要があり、おおむね5年以内に取得価額までの回復が見込まれるのであれば、減損をしないことが合理的と考えられます(同285項)。

特に、親会社が主導して再建計画を立案しこれを支援する場合には、実現可能性について比較的高い評価をすることが可能な場合もあるでしょう。また、この再建計画の中で、資金繰り支援のために、追加融資や債務保証等を行うこともありますが、計画が合理的である限りは、この時点では融資(貸付金)の回収可能性に問題ないものとして引当が不要である場合も考えられます。

図3

3. 計画からの乖離

(1)投資の減損・のれんの減損

上記の取得価額までの回復可能性は毎期見直すことが必要であり、その後の実績が事業計画を下回った場合など、事業計画等に基づく業績回復が予定通りに進まないことが判明した時は、子会社株式の減損処理の要否を検討しなければなりません。
また、連結決算においては、子会社の業績の悪化は当該子会社を連結することにより基本的に直ちに認識されていますが、当該子会社に関してのれんを認識していた場合には、個別決算での子会社株式の減損処理により、子会社株式の減損処理後の簿価と連結上の簿価との差額のうち、のれんの未償却残高に相当する部分について追加の償却が必要となる点にも留意が必要です(資本連結実務指針第32項)。

(2)債権の引当て

さらに、そのように投資の減損が生じる場合には、同社に対する債権や融資も貸倒懸念の状況に陥っている場合が考えられ、回収不能見込額を引き当てる必要が出てくるものと思われます。

この際留意すべきは、平成24年3月期から適用となった過年度遡及(そきゅう)会計基準との関係です。すなわち、一度引当を行った後、次年度以降に実績の確定により引当の過不足の修正を行う際には、当初計上時の見積り誤りに起因する場合以外は、実績が確定した期の営業損益または営業外損益として認識されるという点です(過年度遡及会計基準第55項)。従前、このような差異は特別損益の前期損益修正損益として処理されることもありましたが、過年度遡及会計基準の適用により、計上時の見落としや見積り誤りであれば誤謬(ごびゅう)に該当するため、重要性に応じて遡及修正(修正再表示)をする必要がありますので、従前にも増して適切な見積りが求められることにご注意ください。

図4

4. 債務超過への転落

再建計画から乖離をした上記の段階にて、すでに親会社では投資に関して減損、融資に関して貸倒引当金の計上を行っていることが考えられます。そのまま財政状態の悪化が継続し、債務超過に陥ってしまった場合、投資の評価はゼロまで切り下げることが考えられます。

(1)債務超過相当額への引当

債務超過ということは実質価額がマイナスになることを意味しますが、株式の減損においてはゼロまでしか評価を切り下げることができません。株主有限責任においては出資額までの責任が原則ではありますが、親会社であることに鑑み、当該子会社の債務超過額について親会社の責任において最終的に負担することも多いと考えられます。従ってこのような負担を親会社の財務諸表に反映させる必要があります。

まず子会社に対して債権を有している場合には、当該債権額と子会社の債務超過額を比較して、いずれか少ない額まで貸倒引当金を計上することが考えられます。
次いで、子会社に対して債務保証を行っている場合、債務保証損失という形で損失を負担することが考えられるため、上記で未手当の債務超過負担額について債務保証の金額の枠内で債務保証損失引当金として引当計上することが考えられます。
それでもなお、未手当の債務超過負担額が残る場合には、当該親会社の負担について、関係会社事業損失引当金等の名称で負債に計上することが考えられます。

(2)継続企業の前提の注記の検討

子会社にとって債務超過の状況は、資金繰り等も含めて会社倒産のリスクが高まっていることを意味します。すなわち継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる状況に該当することから、経営者は当該状況の解消や大幅な改善のための対応について検討しなければなりません。そして当該対応の成否に外部の要因等が含まれる結果、重要な不確実性が認められる場合には、継続企業の前提に関する注記(いわゆるGC注記)が必要となる点に留意が必要です。この際、確実性を保証するために、場合によっては親会社によるサポート・レターが発行される場合があります。

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5. 解散の意思決定・清算

債務超過に転落後も業績回復のめどが付かず、最終的に当該子会社の解散を意思決定することがあります。この場合も、基本的に上記の業績悪化時の留意事項の延長となりますが、継続企業を前提に将来キャッシュ・フローや実質価額の回復可能性を考慮していた場合には、解散・清算を前提として再度見直す必要があります。

なお、業績の悪化に従って、これまで述べたように子会社への投資額についてすでに損失処理してあった場合、解散の意思決定は、完全支配関係の有無、すなわち100%子会社か否かによって、税務上の取扱いが異なり、税効果にも影響を与える点に留意が必要です。

(1)完全支配関係がない場合

子会社の資産状態が著しく悪化していて、回復の可能性が認められない場合には、当該子会社株式の評価損は税務上も認容されますが、そうでない場合であっても、清算結了に至った時点では株式消却損として損金計上が認められます。従って、従来、株式評価損を行っていたが認容時期が不明(スケジューリング不能)として税効果を計上していなかった場合でも、解散の意思決定により清算結了時での一時差異解消のスケジューリングが可能となり、繰延税金資産が計上できる可能性があります。

(2)完全支配関係がある場合

平成22年度の税制改正において、グループ法人税制の観点から、完全支配関係にある子会社の清算時に当該子会社の繰越欠損金を親会社が引き継ぐことができることとなりました。他方、損金の二重取りを認めない観点から、清算時の子会社株式の消却損は損金として認められなくなりました。さらに平成23年6月の税制改正において、当該場合には子会社株式評価損の認容も禁止されました。

従って、完全支配関係にある子会社の場合には、上記(1)のように、解散の意思決定によりスケジューリングが可能となることはありません。むしろ解散の意思決定により、売却等の方法により一時差異が解消しないことが明らかになり、差異の性質が一時差異から永久差異に変容することとなると考えられます。従って、繰延税金資産を計上することができないのみならず、従来、税効果の注記において、将来減算一時差異として認識した上で、スケジューリング不能として評価性引当額を計上していた場合には、当該意思決定の後は、一時差異として扱われなくなる点に留意が必要です。

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このように、子会社の業績悪化時の対応は、経営上の重要課題であると同時に、会計上もさまざまな検討事項が生じますので、監査人等も交え十分な検討が必要であることにご留意ください。


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