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減損会計

第7回:回収可能価額

2007.11.15
新日本有限責任監査法人 公認会計士 山岸聡
新日本有限責任監査法人 公認会計士 若林恒行

1.回収可能価額の基本的な考え方

回収可能価額とは、資産または資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額と定義されていますが、通常は使用価値の方が正味売却価額より高いと考えられています。これは、仮に使用価値よりも売却価額の方が大きければ、保有して使用するよりも売却を選択する行動に出るであろうという考え方に基づいています。
この考え方によると、必ずしもすべての資産につき、正味売却価額を算定する必要はないことになります。つまり、使用価値の金額の方が大きいことが判明している場合は、回収可能価額は使用価値になるため、使用価値の算定だけを行えばよいからです。正味売却価額を算定する必要がある場面として考えられるのは例えば次のような場合です。

  • 稼働率の低下や本来の目的以外の使用に供して、使用価値よりも正味売却価額の方が高いと想定される場合
  • 処分がすぐに予定されている場合

2.正味売却価額

正味売却価額とは、資産または資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算定される金額と定義されます。

正味売却価額 = 資産または資産グループの時価 - 処分費用見込額

(1)時価の定義

資産または資産グループの時価は、原則として、市場価格ですが、市場価額が観察できない場合には、合理的に算定された価額が時価とされています。

①市場価格
時価とは公正な評価額をいい、通常、それは観察可能な市場価格をいいます。市場価格は、市場において形成されている取引価格、気配または指標その他の相場と考えられています。固定資産において、観察可能な市場価格が存在する場合は多くはないですが、観察可能な市場価格が存在する場合には、当該市場価格に基づく価額が時価とされます。

②合理的に算定された価額
市場価格が観察できない場合、合理的に算定された価額が時価となります。合理的に算定された価額は市場価格に準ずるものとして、合理的な見積りに基づき、次のような方法で算定されます。

  • 不動産の場合
    「不動産鑑定評価基準」に基づき算定します。ただし、同基準に基づき、自社における合理的な見積もりが困難な場合には、不動産鑑定士の鑑定評価結果をもって、合理的に算定された価額とすることができます。
  • 不動産以外の固定資産の場合
    コスト・アプローチ、マーケット・アプローチおよびインカム・アプローチによる見積方法が考えられます。また、資産等の特性等によりこれらのアプローチを併用または選択して算定します。

コスト・アプローチ
同等の資産を取得するに要するコスト(再調達原価)をもって評価する方法

マーケット・アプローチ
同等の資産が市場で実際に取引される価格をもって評価する方法

インカム・アプローチ
同等の資産を利用して将来において期待される収益をもって評価する方法
インカム・アプローチに基づく具体的な評価方法としては、直接還元法や割引キャッシュフロー(DCF)法などがあります。

(2)処分費用見込額について

処分費用見込額は、類似の資産に関する過去の実績や処分を行う業者からの情報などを参考に、現在価値を見積ります。重要性が乏しい場合には、将来時点に生ずると見込まれる処分費用額を現在価値に割引く必要がないことに留意しますが、実務的には過去に行った処分の実績等の取引から見込むことになります。

(3)将来時点の正味売却価額

将来時点における正味売却価額は、当該時点以後の一期間の収益見込額を、その後の収益に影響を与える要因の変動予測や予測に伴う不確実性を含む当該時点の収益率(最終還元利回り)で割り戻した価額から、処分費用見込額の当該時点における現在価値を控除して算定します。ただし、将来時点の正味売却価額を算定することが不可能な場合には、現在の正味売却価額(償却資産の場合には適切な減価額を控除した金額)を用いることができます。

3.使用価値

使用価値は、資産または資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュフローの現在価値として算定されます。

(1)継続的使用から生ずる将来キャッシュフローの見積り

使用価値の算定に際して継続的使用から生ずる将来キャッシュフローを見積る場合は、企業に固有の事情を反映した合理的で説明可能な仮定および予測に基づいて見積ることになります。

(2)使用後の処分によって生ずるキャッシュフローの見積り

使用後の処分によって生ずるキャッシュフローは、将来時点の正味売却価額として算定します。

(3)キャッシュフローを見積もる期間

使用価値の算定のために将来キャッシュフローを見積もる期間は、資産の経済的残存使用年数または資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数を用います。

図

固定資産Aに関するキャッシュフロー

点線の矢印は、経済的残存使用年数を経過した時点で、なおも使用の用に供することができることを示します。経済的残存使用年数を経過した時点でもそれだけの価値が残っていることを示すため、経済的残存使用年数経過時点におけるキャッシュ・イン・フローを見込むことになります。

固定資産Bに関するキャッシュフロー

この場合は、経済的残存使用年数を経過した時点において価値がないことを示します。将来時点における売却価額はゼロとなることが多いと思います。

固定資産Cに関するキャッシュフロー

この場合は、経済的残存使用年数を経過する前に価値がなくなることを示します。この場合は、生産活動を継続するための固定資産Cに代わる設備投資に関するキャッシュ・アウト・フローを見込むことになります。


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