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会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準

第2回:会計方針の変更

2010.07.28
(2013.11.21 更新)
新日本有限責任監査法人 公認会計士 江村羊奈子
公認会計士 井澤依子

4.会計方針の変更

(1)会計上の原則的な取扱い

①会計基準等の改正に伴う会計方針の変更の場合
会計基準等に特定の経過的な取扱いが定められていない場合には、新たな会計方針を過去の期間の全てに遡及適用します。遡及適用する期間は、必要な場合には、会社設立時までさかのぼることになるものと考えます。

経過措置が定められている場合には、その定めに従います(過年度遡及会計基準6(1))。 会計基準等の改正には、既存の会計基準等の改正又は廃止のほか、新たな会計基準等の設定が含まれます。また、会計基準等を早期適用する場合も含まれます(過年度遡及会計基準5(1))。

②①以外の正当な理由による会計方針の変更(自発的な会計方針の変更)の場合
新たな会計方針を過去の期間の全てに遡及適用します(過年度遡及会計基準6(2))。

③遡及適用の場合の表示上の取扱い
遡及適用する場合には、遡及適用の影響額を、表示する財務諸表のうち、最も古い期間の期首の資産、負債及び純資産の額に反映するとともに、各期間の財務諸表には、各期間の影響額を反映させます(過年度遡及会計基準7)。

具体的には、会社法計算書類であれば、単年度表示のため、遡及適用の影響額を株主資本等変動計算書の当期首の数値に反映することとなり、有価証券報告書であれば、二期比較で開示するため、株主資本等変動計算書の前期首の数値に反映することとなるものと考えられます。

以下の設例のように、第2期に棚卸資産の評価方法を先入先出法から総平均法に変更した場合、第1期の財務諸表について、総平均法により遡及処理を行い、その数値を基に第2期の財務諸表を作成することになります。

有価証券報告書では、遡及処理後の第1期財務諸表と第2期財務諸表を開示することになります。この設例では設立2期目での会計方針の変更のため、第1期の株主資本等変動計算書の期首残高への影響はありません。

一方、会社法計算書類では遡及処理後の第2期財務諸表のみ開示されるため、遡及適用の影響額は、以下図表のとおり、第2期の株主資本等変動計算書の期首残高に反映させます。

<設例>

【前提条件】
  1. A社は設立2期目であり、当期から棚卸資産の評価方法を先入先出法から総平均法に変更した。
  2. 法定実効税率は40%とし、当期の法人税等は当期中に支払い済みとする。
  3. 遡及修正による過年度損益の増減などについては、課税所得に影響を及ぼさないものとする。
  4. 棚卸資産の会計方針の変更による影響額は以下のとおりである。

  第1期期首残高 第1期末残高
先入先出法
(従来の方法)
0 200
総平均法
(遡及適用)
0 300

【第1期の貸借対照表】

  遡及処理前
(先入先出法)
遡及処理後
(総平均法)
差額
資産の部      
現金預金
160 160
棚卸資産
200 300 100
資産合計
360 460 100
       
負債の部      
繰延税金負債
40 40
純資産の部      
資本金
300 300
利益剰余金
60 120 60
負債・純資産合計
360 460 100

【第1期の損益計算書】

  遡及処理前
(先入先出法)
遡及処理後
(総平均法)
差額
売上高 520 520
売上原価 400 300 -100
販管費 20 20
税引前利益 100 200 100
法人税等 40 80 40
当期純利益 60 120 60

【会計方針の変更に伴う修正仕訳】

棚卸資産 100 売上原価 100
法人税等調整額 40 繰延税金負債 40

【会計法の株主資本等変動計算書】

  第1期 第2期
(省略)    
利益余剰金    
当期首残高 0 60
会社方針の変更による累積的影響額 0 60
遡及処理後当期首残高 0 120
当期変動額(当期純利益) 60 100
当期末残高 60 220

(2)原則的な取扱いが実務上不可能な場合

会計基準では、遡及適用が実務上不可能な場合について、例外的な取扱いを定めています(過年度遡及会計基準8)。

①遡及適用が実務上不可能な場合

  • 過去の情報が収集・保存されておらず、合理的な努力を行っても、遡及適用による影響額を算定できない場合
  • 過去における経営者の意図について仮定することが必要な場合(例えば資産の保有目的など、何らかの過年度の経営者の意図を仮定することを伴う場合)
  • 見積りに用いる情報について、過去の財務諸表が作成された時点で入手可能であったものと、その後判明したものとに、客観的に区別することが時の経過により不可能な場合

②遡及適用が実務上不可能な場合の取扱い

ⅰ)部分的な遡及適用を行う場合(過年度遡及会計基準9(1))
累積的影響額は算定できるが、各期間への影響額を正確に配分することができない場合には、遡及適用が実行可能な最も古い期間の期首時点で累積的影響額を算定し、当該期首から将来に向かって変更後の会計方針を適用します。

ⅱ)部分的な遡及適用もできない場合(過年度遡及会計基準9(2))
累積的影響額が算定できない場合には、期首以前の実行可能な最も古い日から将来にわたり新たな会計方針を適用します。

図

(3)会計方針の変更を行った場合の注記

会計方針の変更に関しては、国際的な会計基準と同様に、原則として遡及適用を求めることとされたため、注記項目についても国際的な会計基準とほぼ同様の注記項目となるよう、充実が図られています(過年度遡及会計基準49)。

会計方針の変更を行った場合の注記は、会計基準等の改正に伴う変更の場合と、自発的な変更の場合に分けて、以下のように定められています。表のうち、②、⑥、⑦及び⑧は両者共通の注記事項です。

【会計方針の変更を行った場合の注記事項(会計基準10、11)】

  会計基準等の改正に伴う会計方針の変更 自発的な会計方針の変更
会計基準等の名称
会計方針の変更の内容
経過的な取扱いに従った場合、その旨及び取扱いの概要
経過的な取扱いが将来に影響を及ぼす可能性がある場合には、その旨及び将来への影響。ただし、将来への影響が不明又はこれを合理的に見積もることが困難である場合には、その旨
会計方針の変更を行った正当な理由
表示期間のうち過去の期間について、影響を受ける財務諸表の主な表示科目に対する影響額及び1株当たり情報に対する影響額。 ただし、遡及適用を行っていないときには、実務上算定が可能な、影響を受ける財務諸表の主な表示科目に対する影響額及び1株当たり情報に対する影響額
表示されている最も古い期間の期首純資産に反映された遡及適用の累積的影響額。 ただし、部分的な遡及適用を行っている場合は、累積的影響額を反映させた期における影響額。部分的な遡及適用もできない場合はその旨
原則的取扱いが不可能な場合には、その理由、会計方針の変更の適用方法及び適用開始時期

適用指針の設例に記載されている注記例(自発的な会計方針の変更の場合)は以下のとおりです。なお、注記の右側の丸数字は、上表と対応しており、注記の項目を示しています。

(会計方針の変更)

当社における、商品及び製品の評価方法は、従来、主として総平均法によっていたが、○○○(正当な理由の内容を記載する。)のため、当連結会計年度から先入先出法に変更した。当該会計方針の変更は遡及適用され、前連結会計年度については遡及適用後の連結財務諸表となっている。
この結果、遡及適用を行う前と比べて、前連結会計年度の連結貸借対照表は、商品及び製品、利益剰余金がそれぞれ100百万円、60百万円増加し、前連結会計年度の連結損益計算書は、売上原価が40百万円減少し、営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益がそれぞれ同額増加し、少数株主損益調整前当期純利益及び当期純利益が24百万円増加している。前連結会計年度の連結キャッシュ・フロー計算書は、税金等調整前当期純利益が40百万円増加し、棚卸資産の増減額が40百万円減少している。
前連結会計年度の期首の純資産の帳簿価額に反映された会計方針の変更の累積的影響額により、連結株主資本等変動計算書の利益剰余金の遡及適用後の期首残高は36百万円増加している。
なお、1株当たり情報に与える影響は、当該箇所に記載している。

(4)未適用の会計基準等に関する注記

決算日までに新たに公表された新しい会計基準等のうち、未適用のものがある場合、以下の事項を注記することが求められます(過年度遡及会計基準12)。IFRSや米国基準を適用している子会社(実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」参照)も記載の対象となり、このような子会社がある場合、IFRSや米国基準の改正についても把握する必要があるため、留意が必要です。なお、重要性の乏しいものについては、開示を省略することができるものとされています(財規8の3の3、連結財規14の4)。

未適用の会計基準等に関する注記
新しい会計基準等の名称及び概要
適用予定日(早期適用する場合には早期適用予定日)に関する記述
⇒まだ経営上の判断を行っていない場合にはその旨を注記
新しい会計基準等の適用による影響に関する記述
⇒影響を定量的に把握していない場合には、定性的な情報を注記(適用指針11)

会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準

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