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会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準

第3回:表示方法の変更と会計上の見積りの変更

2010.07.29
(2013.11.21 更新)
新日本有限責任監査法人 公認会計士 江村羊奈子
公認会計士 井澤依子

5.表示方法の変更

(1)会計上の原則的な取扱い

表示方法についても、原則として毎期継続して適用する必要があります。

ただし、次のいずれかの場合には、変更が認められます(過年度遡及会計基準13)。

  • 表示方法を定めた会計基準又は法令等の改正により表示方法の変更を行う場合
  • 会計事象等を財務諸表により適切に反映するために表示方法の変更を行う場合

表示方法を変更した場合には、会計方針の変更の場合と同様に、遡及処理の考え方を導入し、原則として表示する過去の財務諸表について、新たな表示方法に従い財務諸表の組替えを行います(過年度遡及会計基準14、52)。

なお、会計方針の変更と同様に、原則的な取扱いが実務上不可能な場合の取扱いも設けられています(過年度遡及会計基準15)。

(2)表示方法の変更に関する注記

表示方法の変更を行った場合には、次の事項を注記します(過年度遡及会計基準16)。

表示方法の変更
財務諸表の組替えの内容
財務諸表の組替えを行った理由
組み替えられた過去の財務諸表の主な項目の金額
原則的な取扱いが実務上不可能な場合にはその理由

(3)会計方針の変更と表示方法の変更の区別

表示方法の変更には、財務諸表における同一区分内での科目の独立掲記、統合あるいは科目名の変更及び重要性の増加に伴う表示方法の変更のほか、財務諸表の表示区分を超えた表示方法の変更も含まれます(過年度遡及会計基準4(6)、適用指針4)。そして、会計方針の変更と表示方法の変更との区分は、表示方法の変更が会計処理の変更を伴うものであるかどうか、具体的には「資産及び負債並びに損益の認識又は測定について変更を伴う場合」かどうかにより判断されます(適用指針7、19)。

従って、例えば営業外収益から売上高に表示区分を変更する場合において、「資産及び負債並びに損益の認識又は測定について変更を伴う場合」は会計方針の変更であり、「資産及び負債並びに損益の認識又は測定について変更を伴わない場合」は表示方法の変更として取り扱われることとなります。

(4)注記に関する表示方法の変更

表示方法とは、財務諸表の作成に当たって採用した表示の方法であり、注記による開示も含まれるため(過年度遡及会計基準4(2))、貸借対照表や損益計算書等の財務諸表本表だけでなく、数値情報の注記を変更する場合も表示方法の変更に該当します。従って、原則としては、前期の注記の組替えを行い表示方法の変更に関する注記を行うことになると考えられます(過年度遡及会計基準14、16)。

具体的には、以下のようなケースが挙げられます。

  • 損益計算書上、販売費及び一般管理費の科目に一括掲記している場合の「主要な費目及びその金額の注記」(連結財規55条第1項、財規85条第1項)において、前事業年度まで「その他」に含めていた費目を、重要性が高まったことから独立科目として別掲するケース
  • 税効果会計に関する「繰延税金資産及び繰延税金負債の発生の主な原因別の内訳」(連結財規15条の5第1項①、財規8条の12第1項①)や「法定実効税率と税効果会計適用後の負担率の間に重要な差異があるときの、当該差異の原因となった主要な項目別の内訳」(連結財規15条の5第1項②、財規8条の12第1項②)の注記において、別掲項目を変更するケース
    なお、重要性が乏しい場合には、表示方法の変更に関する注記を省略することができるとされており(連結財規14条の5、財規8条の3の4第3項)、重要性を考慮した上で注記の要否を検討することになると考えられます。

6.会計上の見積りの変更

(1)会計上の原則的な取扱い

会計上の見積りに関しては、従来、過去の財務諸表にさかのぼって処理することは求められていません。また、国際的な会計基準においても、新しい情報によってもたらされるものであるとの認識から、遡及処理をせず、影響を将来に向けて認識するという考え方がとられています。このため、会計上の見積りの変更に関しては、従来の取扱いと同様に遡及処理をせず、その影響を当期以降の財務諸表において認識することとされています(過年度遡及会計基準17、55)。

会計上の見積りの変更が行われた場合、以下の会計処理を行います。

  • 当該変更が変更期間のみに影響する場合 ⇒ 当該変更期間に会計処理
  • 当該変更が将来の期間にも影響する場合 ⇒ 将来にわたり会計処理

(2)会計上の見積りの変更に関する注記

会計上の見積りの変更を行った場合には、次の事項を注記します(過年度遡及会計基準18)

会計上の見積りの変更
会計上の見積りの変更の内容
変更による影響額等
  • 当期に影響を及ぼす場合には当期への影響額
  • 当期への影響がない場合でも将来に影響を及ぼす可能性があり、その金額を合理的に見積もることができるときには、当該影響額(将来への影響額を合理的に見積もることが困難な場合にはその旨)

(3)会計方針の変更との区別が困難なケース

①会計方針の変更との区別が困難な場合
会計方針の変更と会計上の見積りの変更を区別することが困難な場合については、会計上の見積りの変更と同様に取り扱い、遡及適用は行わないこととされています。ただし、一定の注記を行う必要があります(過年度遡及会計基準19)。

②減価償却方法の変更の取扱い
従来わが国では、減価償却方法が会計方針の一つとされており、減価償却方法の変更は会計方針の変更として取り扱われていますが、国際的な会計基準においては、会計上の見積りの変更と同様に取り扱い、遡及適用の対象とはされていないため、減価償却方法の変更についての取扱いが別途規定されています。

有形固定資産等の減価償却方法及び無形固定資産の償却方法は、会計方針に該当しますが、減価償却方法の変更は、会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合(過年度遡及会計基準19参照)に該当するものとし、会計上の見積りの変更と同様に扱い、遡及適用は行いません(過年度遡及会計基準20)。

(4)臨時償却の廃止(過年度遡及会計基準57)

固定資産の耐用年数の変更等について、従来は臨時償却による方法も認められていましたが、国際的な会計基準とのコンバージェンスの観点も踏まえ、臨時償却は廃止し、当期以降の費用配分に影響させる方法のみを認める取扱いとすることとされています。

(5)引当金過不足修正額の取扱い

従来、過年度における引当金過不足修正額については、前期損益修正として特別損益に表示することが一般的でしたが、当期中の状況変化により会計上の見積りの変更を行ったときの差額や、実績が確定した際の見積金額との差額は、その変更があった期又は実績が確定した期に、その性質により営業損益・営業外損益として処理することとなっています(過年度遡及会計基準55)。

なお、引当金の過不足が計上時の見積り誤りに起因する場合には、過去の誤謬に該当します。従って、引当金過不足修正額が発生した場合には、過去の財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて最善の見積りを行っているかどうか確認することが求められます。

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