業種別会計
保険業

第1回:保険の意義・機能と会計基準

2010.11.09
新日本有限責任監査法人 保険業研究会
公認会計士 近藤敏弘/碓井誠人

はじめに

「保険」という言葉は保険会社の商品パンフレットなどでよく見聞きすると思いますが、保険そのものの仕組みや、保険会社の会計がどのように行われているかについては、意外と馴染みがないかもしれません。今回は、保険業の会計について以下の構成で説明します。

なお、文中意見にわたる部分は筆者の私見であることを予めお断りしておきます。

1. 保険の意義

(1)法的定義

「保険契約」は、保険法で以下のように定義されています。「保険契約、共済契約その他いかなる名称であるかを問わず、当事者の一方が一定の事由が生じたことを条件として財産上の給付(生命保険契約及び疾病傷害定額保険契約にあっては、金銭の支払に限る。以下「保険給付」という。)を行うことを約し、相手がこれに対して当該一定事由の発生の可能性に応じたものとして保険料を支払うことを約する契約をいう。」(保険法2①)

簡単に言い換えれば、保険契約とは、火事などの損害や死亡など一定の事実が発生したら、お金を払うことを加入者と約束し、加入者はその事実が発生した場合にお金をもらえることに対して保険料を支払う契約ということができます。損害保険契約、生命保険契約、さらに傷害疾病損害保険契約、傷害疾病定額保険契約は典型的な保険契約であり、個別具体的に保険契約の定義を準用し、保険法で以下のように定義されています。

  • 損害保険契約 保険契約のうち、保険者が一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補することを約するものをいう。」(保険法2⑥)
  • 生命保険契約 保険契約のうち、保険者が人の生存又は死亡に関し一定の保険給付を行うことを約するものをいう。」(保険法2⑧)
  • 傷害疾病損害保険契約 損害保険契約のうち、保険者が人の傷害疾病によって生ずることのある損害をてん補することを約するものをいう。」(保険法2⑦)
  • 傷害疾病定額保険契約 保険契約のうち、保険者が人の傷害疾病に基づき一定の保険給付を行うことを約するものをいう。」(保険法2⑨)

なお、保険法は民法や商法の特別法であり、私保険における関係者の権利や義務などについて定めるものであり、社会保険などのいわゆる公保険には適用されません。

【図表1】保険契約の定義

  保 険 契 約
保険契約
の類型
生命保険契約 傷害疾病定
額保険契約
損害保険契約
傷害疾病
損害保険契約
その他の
損害保険契約
一定の事由 人の生存
又は死亡
人の傷害疾病 一定の偶然
の事故
保険給付額 契約で定めた一定額の範囲内 実際に生じた損害の範囲内
保険給付手段 金銭のみ 金銭及び現物
保険者 生命保険業(会社) 損害保険業(会社)
共済事業等

(2)経済的機能

経済学的には、保険とは「危険」が現実化した時に生じる経済的損失・負担を軽減し、または回復するための危険対策措置のことを指します。危険の具体的なものは例えば、以下のようなものがありますが、基本的にはこれらは保険の対象となり得るものです。また、危険は家計のみならず、企業にも降りかかるものです。

【危険の具体例】

(家計)

  • 風水害・地震・火災などの天災
  • 詐欺・盗難などの人災
  • 不況による家業の失敗など社会経済的な災難
  • 世帯主の失業・疾病・傷害等による収入の中断
  • 高度障害・死亡による収入の途絶
  • 家族の疾病・傷害医療費用
  • 教育・結婚費用
  • 高齢者の扶養費用負担等
  • 他人の身元引き受けから生じた損害の賠償責任
  • 車の運転の事故による他人の身体・財産に与えた損害の賠償責任

(企業)

  • 製品・材料の輸送途上における災害
  • 売掛金の回収不能の危険
  • 相手方の契約解除や不履行の危険
  • 工場等での故障や事故
  • 従業員の労働災害
  • 廃棄物等による公害の損害賠償責任