業種別会計
保険業

第2回:損害保険会社のビジネスと会計処理の概要

2010.11.09
新日本有限責任監査法人 保険業研究会
公認会計士 近藤敏弘/碓井誠人

1. 損害保険会社とは

損害保険会社とは、保険会社のうち「損害保険業免許」を受けた者をいうとされています(保険業法第2条第4項)。また、損害保険業免許は一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補することを約し、保険の引受を行う事業に係る免許とされています(保険業法第3条第5項)。損害保険業を営むためには、内閣総理大臣から損害保険業の免許を受ける必要があります。平成22年4月1日現在、わが国には27社の損害保険会社があり(日本に支店を持つ外国保険会社を除く)、自動車保険、火災保険、傷害保険、自賠責保険等を引受けています。

2. 損害保険業のビジネスモデル

その業務の流れを簡単に見ていきましょう。

(1)損害保険商品の設計

保険商品は保険数理計算により商品設計がなされます。具体的には保険種類に応じて損害の発生確率を見積もり、保険料等の引受条件を決定する保険数理計算のプロセスが必要となります。このため、損害保険会社には、保険数理の専門家であるアクチュアリーの資格を持ち、実務経験を有する保険計理人を設置することが義務づけられています。

(2)募集・販売・保険料の収受

損害保険契約は契約者が契約申し込みをし、損害保険会社(損害保険代理店を含む)がそれを承諾することにより成立します。損害保険の募集・販売を保険会社の役職員が直接行う「直扱」には、自動車保険の電話やインターネット等によるいわゆるダイレクト販売や、船舶保険等の特殊で大口の損害保険契約があり、現状では、損害保険代理店(以下、代理店)を通じた募集・販売が圧倒的に多く、国内元受保険料の実に92%が代理店扱いとなっています(2009年度日本損害保険協会データ)。

(3)保険金の支払い

契約者から事故があった旨の連絡があると、その連絡に基づいて損害保険会社が事故や損害の状況等について損害調査を行い、保険金を支払います。損害調査を損害保険会社が専門の調査会社に委託して行なうこともあります。委託を受ける専門の調査会社には、自動車の物損事故を扱うアジャスターや、火災保険等の契約に係る建物や動産の損害額の鑑定、事故原因等の調査を行なう損害保険登録鑑定人が所属しています。

(4)再保険の利用

再保険とは、自己の負担する保険責任の一部または全部を他の保険会社に転嫁することをいいます。損害保険会社では、自己の保有するリスクの分散を図るため、また単独で引受けるには巨額すぎる物件の引受を行うため、再保険を利用しています。

(5)資金の運用

損害保険会社では、保険料が保険金等の支払いに先立って入金され、多くの資金が確保されるので、その資金を運用することも重要になります。資金の運用にあたっては当該資金が保険金支払のための原資であることから、流動性・安定性を重視して、預金、有価証券、貸付金など様々な資産で運用されています。

3. 損害保険業における会計処理及び表示の特徴

(1)収益の繰延及び費用の見越が必要であること

一般事業会社においても発生主義に基づいて財務報告する場合、収益の繰延(前受収益の計上)及び費用の見越(未払費用の計上)が必要です。損害保険会社においては、保険料を収受した上で、リスクのカバーという時間の経過に応じて発生する役務を、一定の契約に従い継続的に顧客に提供することが本業であるため、収益の繰延及び費用の見越を行うことが、一層重要となります。

損害保険会社において翌期に繰延べられた保険料(収益)のことを未経過保険料といい、当期の保険引受に関して保険金等を見越し計上したものを支払備金といいます。両者はともに右記(2)の準備金の一つです。例えば、保険料2,000(保険期間1年間、1回払い、保険始期12月1日)を12月に計上した場合、損害保険会社は3月決算なので、未経過期間である翌年度4月1日から11月30日までの計8ヶ月間に相当する保険料1,333は翌期に繰り延べる必要があります。

収益の繰延及び費用の見越

(2)保険業法に基づく各種準備金の計上が必要なこと

損害保険会社は、多くの契約者から保険料を集め、事故発生時に保険金を支払わなければなりません。このため、損害保険会社は契約者の利益を保護するために、保険金等を十分に支払えるだけの財務基盤を確保する必要があり、このため保険業法で各種の準備金を会計上、計上することが義務付けられています。

(3)別記事業であること

損害保険会社は、監督者である金融庁長官に対して事業年度毎に業務及び財産の状況を記載した中間業務報告書と業務報告書を提出することが保険業法第110条で義務付けられています。(中間)業務報告書における会計処理及び表示方法については、保険業法及び保険業法施行規則等に従って行うことが求められます。報告様式についても保険業法施行規則第59条に定める別紙様式で行う必要があり、B/Sについては流動・固定分類がないこと、P/Lについては営業損益と営業外損益の区分がない代わりに経常損益が①保険引受損益、②資産運用損益、③その他経常損益に分類されているという特徴があります。

また財務諸表等規則第2条により、保険業は別記事業とされています。このため、金融商品取引法に基づく財務報告も保険業法施行規則に準じた様式でなされます。会社法に基づく財務報告も同様です(会社法計算規則第146条1項)。したがって、前述のとおり、保険業に固有の会計処理及び表示方法については、保険業法及び保険業法施行規則に定める方法が、一般に公正妥当と認められる会計基準となっています。なお、保険業法及び保険業法施行規則に定めのない事項については、(連結)財務諸表等規則、中間(連結)財務諸表規則及び会社計算規則並びに一般に公正妥当と認められる会計基準に従います。