業種別会計
不動産業

第3回:不動産賃貸業の事業と会計の特徴

2016.12.19
新日本有限責任監査法人 不動産セクター
公認会計士 阿部徳仁/大場健司/村上和典
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1. 不動産賃貸業とは

不動産賃貸業とは、所有不動産を賃貸して賃貸料等を得る事業をいいます。賃貸不動産の種類としては、オフィスビル、商業施設、マンション、アパート、倉庫など幅広いですが、本稿では主にオフィスビル、商業施設、マンションの賃貸業について解説します。

2. 不動産賃貸業の特徴

(1) 立地条件が最大の要素であること

不動産賃貸業においては、駅に近いなど交通アクセスが良いこと、周りに店舗などがあること、近隣に公共機関があることなど、その利便性が収益性を決める最大の要素になります。近年の不動産市況全般としては、地価の上昇、建築コストの高止まりにより不動産販売価格も上昇傾向が続く中、賃料水準も都心の好立地物件では高い水準が継続し、郊外や不便な立地の物件との価格差は広がっているといえます。

(2) 定型的な取引で安定収入が得られること

不動産賃貸業は、テナントが入居してしまえば、毎月一定の賃料収入が得られます。また、定型的な取引で特殊なノウハウを必要としないため、比較的安定した事業と考えられます。

(3) 取引に関する規制を受けること

不動産賃貸業においては、賃貸物件の建築に当たって、都市計画法、建築基準法、大都市法、消防法などの規制を受けます。また、物件の賃貸に当たっては、民法、借地借家法(定期借地権、定期借家権を含む)、消費者契約法などの規制を受けます。

(4) 需給動向に左右されること

不動産賃貸業においては、貸手側の供給量と借手側の需要量のバランスによって、賃料相場が左右されます。特にオフィスにおいては、ITなど最新の設備がある物件や、災害対応に優れた物件に需要が集まる一方で、設備が劣化した物件では空室率上昇が長期にわたるなど、物件による二極化も見られます。

3. 不動産賃貸業の財務諸表の特徴

(1) 不動産賃貸業の貸借対照表の特徴

不動産賃貸業では、不動産は販売目的ではなく賃貸目的で保有するため、有形固定資産に計上されます。不動産の取得には多額の資金が必要となることから、不動産を担保にした借入金による資金調達を行うのが一般的です。従って、不動産賃貸業の貸借対照表は、総資産が大きい、自己資本比率が低い、などの特徴があります。また、不動産を担保に入れた場合には注記が必要となるので留意が必要です。

なお、他の不動産所有者から賃借し、サブリースという形で第三者に転貸し、収益を獲得する場合もあります。この場合には、賃借契約がファイナンス・リースかオペレーティング・リースに該当するかによって貸借対照表が大きく変わってきます。

(2) 不動産賃貸業の損益計算書の特徴

不動産賃貸業では、不動産賃貸による賃借料を収受することによって収益を獲得します。損益計算書では賃料収入に加え、礼金、更新料などの収益も計上されます。また、テナントが使用した分の水道光熱費を収受する場合もあります。一方、売上原価には減価償却費のほか、清掃等の管理費、水道光熱費、固定資産税や都市計画税、損害保険料などに加え、一定期間ごとに修繕費が計上されます。他の事業に比べると利益率が高く、減価償却により手元に資金が残りやすい一方で、一定期間ごとの大規模修繕により多額の資金が必要になるため、資金繰りには留意する必要があります。また、収益は主として賃料収入によって構成されるため、不動産分譲業と比較すると、投資額に対する期間収益額は相対的に小さくなる(投資回収期間が長い)傾向にあります。

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