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インフラストラクチャー・アドバイザリー

下水道におけるPFIの活用と効果
-水ビジネスでの競争力向上にも期待-

2014.02.12
インフラストラクチャー・アドバイザリーグループ

2013年6月に公表された政府の成長戦略(日本再興戦略)において、「空港、上下水道、道路を始めとする公共施設について、公共による管理から、民間事業者による経営へと転換することにより、サービスの向上や公共施設を活用した新しい価値を生み出す経営手法である公共施設等運営権制度(いわゆる「コンセッション」)の導入を推進する」ことが明記されました。コンセッションはPPP/PFIの一類型であり、民間事業者が施設の維持管理、運営に加えて、事業計画の策定、使用料の決定、改築や更新業務を含めて一体的に事業を担うことを想定したスキームです。

◆下水道事業のコンセッション方式の主な特徴
項目 内容
業務内容
  • 性能発注による維持管理および改築
  • 維持管理マネジメントや施設保全計画・管理
  • 改築更新の時期や内容に関する企画
委託期間

  • 上限はないが、30年程度までを想定
資金
  • 利用者から事業者が収受するとともに、国庫補助制度等についても公的主体が実施する時と同様の取り扱い

下水道事業を所管する国土交通省では、「下水道施設の運営におけるPPP/PFIの活用に関する検討会」(座長:滝沢智・東京大学教授)が設置されており、下水道におけるコンセッション手法の導入のあり方について検討が進められています。
本稿では、下水道事業の概要を説明するとともに、下水道事業に上記のように民間事業者の活力を導入することの意義について紹介していきます。

維持管理や運営、民間セクターが活躍

下水道は、雨水を排除して都市の浸水被害を防ぐとともに、私たちの生活に伴い発生する汚水を収集、浄化し自然環境に戻すという2つの役割を負っているインフラ事業です。雨水や、家庭や事業所で発生した汚水は、下水道管に集められます。汚水は、下水処理場に運ばれ、処理場では、微生物の働きなどによって汚れを沈殿させたり、消毒したりして、綺麗になった水を湖沼や河川、海などに放流しています。
法制度的観点では、下水道事業は、下水道法により地方公共団体が管理する事業です。一方で、法定業務以外の、施設の設計、建設、維持運営などの個別業務については、自治体からの発注を受けた民間事業者が業務を実施していることがほとんどです。また、全国の下水処理場のうち227カ所では、「包括的民間委託」と呼ばれる枠組みによって、民間事業者が維持管理や運営を複数年(3~5年)契約で一手に引き受けています。
このように、果たすべき役割や法制度に公的な色合いが強い中でも、民間セクターが広く活躍しているという特徴があります。

下水道でPPP/PFIを促進する理由

では、なぜ「いま」下水道分野で、コンセッションのような新たなPPP/PFIの積極的活用という議論がされているのでしょうか。PPP/PFIの基本的な発想は、公的主体が直接事業を実施する場合と、民間事業者が同様の業務を実施する場合とを比べた際に、事業のリスクをより良くコントロールでき、より低コストで良いサービスを提供できる主体が事業を実施するという考え方に基づいています。個別の下水道事業で今後、民間事業者に維持管理のみならず、幅広く事業マネジメントを依頼した際に、どのような効率化効果があり得るのかを研究することが重要です。
ただし、コンセッションの効果はコスト効率以外の視点で捉えることもできます。
本稿では、どのような視点があり得るのかを簡単に説明したいと思います。

自治体の事業管理・執行体制の強化策

中小自治体の下水道事業は、少人数での事業運営を余儀なくされています。国土交通省「下水道の事業運営のあり方に関する検討会」によると、11年度の下水道正規職員は、ピーク時の1997年度水準(約4万7千人)の3分の2の水準(約3万1千人)に落ち込んでいます。また、人口1万人以上5万人未満の自治体における平均的な下水道部署の職員数は、6人(10年度)とされており、体制の脆弱さが課題とされています。
自治体は限られた人員数で、行政が最低限実施する必要がある、さまざまなマネジメント業務(事業計画の策定、管理者として事業遂行上の関係主体との調整、使用料水準や体系の検討、予算・決算業務、発注管理など)を遂行していかなくてはなりませんが、民間委託や日本下水道事業団などの業務執行支援組織を最大限に活用したとしても、小規模自治体では十分に対応ができていないケースがあります。
こうした点で、従来は想定されていなかった「民間事業者が下水道事業のマネジメントの一端を担う」ことが有力な解決策となる可能性があります。従来、小規模事業については、経営統合による広域化によって人的制約を緩和するという考え方があります。しかし、破談となった大阪府市の上水道事業統合において見られるように、主に料金格差が障壁になって実現に至らないことや、統合に至っても、複数の料金体系を一本化する中で、本来の原価構成と乖離した料金設定となるケースも見られます。この点で、PPP/PFIによって、隣接する複数の自治体から事業を受託するような形態は、民間事業者を通じて「事実上の広域化」が行われていると考えることもできます。

国際的な競争力向上のためのツール

新興国を中心に大規模な市場が生まれつつある海外の下水道整備の需要を取り込み、日本企業の成長に資する観点からもPPP/PFIの推進は重要です。
わが国では、下水道事業の計画を定め、使用料の体系や水準について主体的に検討するのは自治体であり、下水道施設の設計、施工や維持管理は自治体から発注を受けた民間事業者が行うという分業体制の中で、下水道整備が進められてきました。そのため、国際水ビジネス市場においても、日本企業が競争力を有するのは、製品・設備や維持管理に関する個別の要素技術に限られます。近年では、中国や韓国企業がコスト競争力を武器に、費用対効果で日本企業が劣位に置かれるケースが出てきています。
従来、自治体のみが担っていた計画策定や使用料水準の検討などについて、民間事業者がノウハウや経験を蓄積することは、諸外国における日本企業のビジネス機会を拡大し、成長機会を生み出していくための基本的条件であると言えます。

ポテンシャル最大化のためのツール

下水道事業は、水処理過程で発生する汚泥や、施設の敷地や空間に着目した事業機会が存在し得ます。例えば、汚泥から発生するガスを活用した発電事業や、敷地を活用した商業施設の開発や太陽光発電事業などの可能性があげられます。施設管理に加え、こうした収益を生む機会で、自治体側にノウハウがない分野も、併せて民間事業者の知見を活用していく方向性は、下水道事業のポテンシャルを最大限発揮するために有意義となるでしょう。
今後の下水道事業は、職員の減少、人口減少などによる処理水量の減少、施設の更新投資需要の増加などの課題に、適切に対処していく必要があります。
下水道普及を目標とする前提では当たり前であった官民の役割分担を見直し、重要な公共サービスとしての下水道事業と、日本経済を支える下水道事業という、それぞれの維持・成長の新たな目標設定が何よりも重要です。

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