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インフラストラクチャー・アドバイザリー

地方港湾で民間活用導入の動き広がる
-創意工夫生かし、自治体も情報整理を-

2014.03.13
インフラストラクチャー・アドバイザリーグループ

経済のグローバル化、アジア諸国の分業の推進により、物流の拠点となる港湾についても重要性は増しています。積極的な集荷活動や営業活動を展開し、荷主や船社など、利用者のニーズに的確に対応した、戦略的な港湾運営が必要となってきています。
このような環境下において、わが国では港湾の国際競争力の強化を図るべく、港湾の運営に民間事業者の視点を入れ、利用者のニーズに適切に応えるために、さまざまな策が検討されてきました。
従来の港湾法では、港湾運営は地方自治体などの港湾管理者のみが実施できることとされ、港湾運営に民間事業者の視点を取り入れるためには、地方自治法に基づく指定管理者制度の導入や、構造改革特別区域法に基づく特定埠頭運営事業として運用するなど、何かしらの策を講じることが必要でした。
このような港湾法の課題を解消すべく、2011年6月の新成長戦略「21世紀日本の復活に向けた21の国家戦略プロジェクト」において、「港湾の選択と集中を進め、民間の知恵と資金を活用した港湾経営の実現を図る」ために港湾法が改正され、指定管理者制度、構造改革特別区域法によることなく、民間事業者の視点を取り入れた港湾運営が可能となりました。

港湾運営会社制度の創設と期待される効果

改正された港湾法においては、港格(港湾の種類)の見直し、直轄港湾工事の国費負担比率の引き上げなどが規定されていますが、目玉として挙げられているのが、港湾運営会社制度の創設です。これは、港湾法の改正を機に、港湾の選択と集中を進めるべく港格を見直し、国際海上輸送網の拠点として最上位に位置付ける国際戦略港湾や、特に重要と考えられる国際拠点港湾に指定された港湾に関しては、港湾管理者または国の指定に基づき、株式会社が港湾の運営主体となることができるという制度です。国、地方公共団体は、埠頭群を構成する行政財産の貸し付けを港湾運営会社に行い、港湾運営会社は国から無利子での借り入れ、固定資産税の減免など、さまざまな便益を受けつつ、運営コストの削減、ゲートオープン時間の延長、利用者サービスの向上など、民間事業者の視点から効率的かつ効果的な港湾運営を行うことが期待されます。

◆港湾運営会社制度が利用可能な港湾
港格 港湾名(港湾管理者)
国際戦略港湾 東京港(東京都)、川崎港(川崎市)、横浜港(横浜市)、
大阪港(大阪市)、神戸港(神戸市)
国際拠点港湾 室蘭港(室蘭市)、苫小牧港(苫小牧市)、
仙台塩釜港(宮城県)、千葉港(千葉県)、
新潟港(新潟県)、伏木富山港(富山県)、清水港(静岡県)、
名古屋港(名古屋港管理組合)、
四日市港(四日市港管理組合)、堺泉北港(大阪府)、
姫路港(兵庫県)、和歌山下津港(和歌山県)、
水島港(岡山県)、広島港(広島県)、徳山下松港(山口県)、
下関港(下関市)、北九州港(北九州市)、博多港(福岡市)

新潟港、博多港など地方でも導入の動き

これを受けて、国際戦略港湾である京浜港(東京港、川崎港、横浜港)および阪神港(大阪港、神戸港)では、埠頭株式会社が(将来の経営統合を前提とした特例の)港湾運営会社として申請を済ませ、大阪港、神戸港、横浜港がすでに国からの指定を受けています。また、国際拠点港湾の港湾管理者である地方公共団体のうち、いくつかの団体には、積極的に同制度を導入する動きが見られます。博多港、水島港は、構造改革特別区域法に基づく行政財産の貸付期間が終了する2014年3月までに準備を完了する予定です。新潟港に関しては、指定管理者制度により港湾運営を行っていましたが、港湾運営会社の資本構成を、原則として民間出資比率が2分の1以上となるように設定するなどの条件を付した上で公募を実施し、すでに港湾運営の候補者が決定しています。また、導入時期が明確に定まっていないものの、早期から検討を開始していた広島港や、複数の港を統合後、港湾運営会社制度の導入を検討している仙台塩釜港、名古屋港、四日市港など、港湾運営に民間事業者を活用する動きが見られます。

港湾運営会社制度導入の際の留意点

このように、複数の地方公共団体が港湾運営に民間事業者の視点を取り入れるべく、港湾運営会社制度の導入を検討していますが、導入に際しての留意事項をいくつか挙げてみましょう。

  • (1)民間の創意工夫を十分に生かせるスキーム
    確かに、公共財である埠頭群の運営を営利目的たる株式会社が行うと、利潤を追求するあまり、公共性を担保できなくなるという懸念は残ります。しかしながら、港湾法では、「施設の利用その他港湾の管理運営に関し、不平等な取扱をしてはならない」と規定されているなど、一定の公共性が担保されています。港湾という公共性のあるインフラ運営を任せるため、ある程度、公的主体の関与は必要と考えられますが、過度な関与により創意工夫を生かせない仕組みとなってしまっては本末転倒です。
  • (2) 実現可能性調査
    実現可能性調査では、地方公共団体の港湾整備に要した起債償還に耐え得る貸付料水準、港湾運営会社の税負担、民間事業者の人件費などの追加コストに関する適切な見積もりや、将来のコンテナ量の推移などを想定して、いくつものパターンのシミュレーションを行った上、港湾運営会社が荷捌施設などの更新投資に耐えられるのか、港湾運営会社が赤字状態とはならないのか、資金不足に陥らないのかなどを検討します。さらに、民間事業者にとって魅力的な利益水準となるのかについても考慮する必要があります。広く公募する場合には、民間事業者が要求する利益水準について市場調査を実施することも必要となります。
  • (3)地方公共団体の情報整理
    直営港湾などは、シミュレーションのための準備として、対象港湾に係る収支を抽出し、減価償却費などのコストを新たに計算した企業会計並みの損益情報を整理する必要があります。また、貸付料を財源として償還すべき起債も整理する必要があります。さらに、制度導入後、貸付契約を締結するために貸付対象資産を特定する必要もあります。このような情報整理は相当な時間を要すると考えられ、適切なスケジューリングが必要となります。

課題と今後の展望

これまで述べてきたように、港湾についても民間活用を進めるべく、港湾運営会社制度の導入という動きがありますが、制度上の課題も残っています。例えば、港湾法第43条の21において、「何人も、港湾運営会社の総株主の議決権の100分の20以上の数の議決権を取得し、又は保有してはならない。」と規定され、港湾運営会社に出資する企業は、1社が単独で株主総会の議決権の過半数を保有することができず、拒否権も確保できません。このため、積極的に港湾運営に関与したいと考えている企業による一元的管理が困難となっています。また、港湾運営会社がコンテナ貨物量を増やすべく、利用者を対象としたインセンティブ制度を導入したとしても、税務上、損金算入できないというリスクがあり、港湾への集荷促進策に一定の制限が生じています。このような現行制度上の課題もありますが、他方では、国際戦略総合特区制度の活用により、集荷インセンティブの損金算入・税額控除が可能となるような提案が挙げられるなどの動きもあり、上記に示したような課題を解消し、港湾運営会社制度が、わが国の港湾における真の国際競争力強化のためのツールとなっていくことに期待したいと思います。

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