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インフラストラクチャー・アドバイザリー

地方空港での民間活用と効果
-新規路線で地域ににぎわい-

2014.03.25
インフラストラクチャー・アドバイザリーグループ

日本の空港、97カ所で整備

わが国の空港は、社会経済の発展や高速交通需要の増大に伴い、順次、整備が進められてきた結果、現在、全国で合計97カ所の空港が整備されています。設置管理者は、国、地方公共団体、空港会社、自衛隊との共用など、いくつかのタイプに分けられますが、空港の多くは三大都市圏(東京、大阪、名古屋)以外の地方都市に立地しており、本稿ではそれらを総称して「地方空港」として位置付けます。
地方空港の利用客数は、新幹線などのほかの交通網との競合や、いわゆる羽田便の有無により大きく左右されますが、人口減少・少子高齢化が進む中、現状のままでは国内航空の需要、ひいては地方空港の需要の順調な増加は見込めません。従って、さらに効率的な空港経営が求められる中で、地方空港の運営に重点を置いた空港政策をどのように進めていくかのかが課題とされています。本稿では、地方空港に焦点を当て、民間活力の活用の動きと、それに伴い期待される効果の事例を紹介します。

空港の民間活用を促進する法制度の動向

2013年6月に施行された「民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する法律」(以下、民活空港運営法)において、航空法、空港法などの関係法律の特例措置が定められたことを受け、公共施設等運営権制度(公共施設の運営を民間事業者に委ねることを可能にする制度=いわゆるコンセッション方式)の活用が可能となり、国管理空港などの運営について民間委託を行う制度的枠組みが完成しました。
民活空港運営法においては、地方公共団体が設置管理者である地方管理空港に関しても、地方公共団体の判断により、民間事業者が施設の維持管理、運営に加えて、事業計画の策定、使用料の決定、改築や更新業務を含めて、一体的に事業を担うことが可能となりました。

地方に所在する国管理空港の民間活用の動き

PFI法および民活空港運営法を用いることで、理論的には多くの地方空港において、コンセッションを用いた民間事業者による空港運営が可能となりましたが、この制度の導入に最も前向きであるのが仙台空港です。
国土交通省航空局が発表している仙台空港に関する基本方針ならびに基本的スキーム(案)では、コンセッションを用いた仙台空港の運営権者に選定された民間事業者は、滑走路などの航空系事業とターミナルビルなどの非航空系事業の経営を一体的に行うことを基本としています。また、当該空港の利用者の利便に資する施設の事業とも可能な限りの連携を図るものとされ、30年超の運営権が譲渡されることとなります。当該運営権の枠組みにおいては、着陸料の設定、物販・飲食テナントの誘致、維持管理におけるコストコントロール、大規模な更新投資などについて、民間事業者による運営で経営を効率化することが目標として掲げられています。
また、宮城県は、民営化された時点を起点として、30年後の仙台空港の目標を「年間旅客数600万人、貨物取扱量5万トン」と設定しており、民間活用を通じたローコストキャリア(LCC)のさらなる誘致や新路線の開発に期待しています。

地方管理空港の民間活用の動き

地方に所在する国管理空港の民間活用の事例として、仙台空港のコンセッションに向けての取り組みを紹介しましたが、次に地方管理空港の民間活用の動きの一例として、富士山静岡空港の例を取り上げます。
富士山静岡空港では、地元企業の100%出資により空港運営会社を設立し、所有する旅客ターミナルビルを運営するとともに、指定管理者として開港当初より空港基本施設の管理業務を実施することで、ほぼ一体的な運営が行われています。ただ、航空法において、空港の設置者が法令で定める保安上の基準に従って施設を管理することが定められているため、県が施設の安全確保、緊急時の対応、使用料(着陸料)の設定を行い、施設の点検、清掃、警備などの事実上の行為を中心として指定管理者制度を活用しています。現状の指定管理者制度では、業務範囲が限定され、特に着陸料などの施設使用料の収受が困難であるため、民間経営による空港運営で効果を上げることには限界があります。また、空港運営の一体化手法として前述したコンセッションについては、富士山静岡空港でも導入される可能性が十分にありますが、実際の導入では、現存の指定管理者制度および指定管理者の取り扱い、旅客ターミナルビルの取り扱いといった課題が存在します。
そこで、富士山静岡空港では、将来的なコンセッションの導入を見据えて、経営体制の見直しを準備するフェーズに入っています。来年度以降を開港後のフェーズ2と設定し、静岡県が旅客ターミナルビルを買い取り、現状と将来的な発展の姿を踏まえたビルの増改築を行うことが予定されています。フェーズ2においても指定管理者制度の枠組みは継続しますが、静岡県が指定管理者である空港運営会社に出資し、株主として経営に深く関与する可能性があり、公共サイドのコミットメントの下、経営の活性化および早期のコンセッションの実現を模索することとなります。
静岡県としては、富士山が世界遺産に登録されたことで観光需要が増す中、コンセッションの導入による地域の航空ネットワークの拡大、観光客の増大による地域経済のさらなる活性化といった効果を期待しています。

◆空港運営の民間委託で波及する効果

空港運営の民間委託で波及する効果
出典:国土交通省

上記に事例として紹介した仙台空港、富士山静岡空港以外の地方空港でも、コンセッションを用いた民間活用を調査・検討している例は多数見受けられます。
国や地方自治体の視点においても、民間の知恵と資金の活用などにより、空港経営の徹底的な効率化を図り、航空運送事業者や利用者の利便性の向上を図ること、航空需要・旅客数・内外の交流人口の拡大による地域活性化を実現すること、国や地方自治体の財政の重荷となっていた空港整備費用や補助金を軽減させることなどの効果が期待できます。
また、オーストラリアでは、各地方空港がLCCの就航や非航空系分野の売上増加、コスト削減効果などで、近年、飛躍的に収益を伸ばしていることが見て取れ、諸外国には目標とすべき空港運営の民間活用の先進事例が存在します。
地方空港へのコンセッション導入は、国内交通網の多角化、空港施設のにぎわいによる地域活性化、民間事業者による空港運営という新たな産業の創出など、空港だけにとどまらず、多様な分野への展開が期待されるところであり、今後の動きが注目されます。

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