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新地方公会計制度解説

第4回:貸借対照表(負債・純資産)

2015.03.23
地方自治体支援室 公認会計士 伊澤賢司
公認会計士 久保田康仁

第3回では、貸借対照表(資産)について解説しました。今回は、貸借対照表(負債・純資産)について詳解します。

1. 負債

負債は、以下のように定義されています(報告書第39段落)。

  • 過去の事象から発生した
  • 特定の会計主体の現在の義務
  • ③-1義務を履行するために経済的便益(キャッシュ・フロー)が流出するか
    または
  • ③-2サービス提供能力の低下を招くことが予想されるもの

①「過去の事象」を定義に含めているのは、負債の発生原因となる事象(出来事)が生じている必要があるという意味です。
③企業会計では、経済的便益が流出するもののみを負債と捉えていますが、統一基準では、サービス提供能力の低下を招くものも負債となります。
負債は、「固定負債」および「流動負債」に分類して表示します(報告書第131段落)。固定負債と流動負債の区分は1年基準によります(報告書第67段落)。

2. 固定負債

固定負債は、「地方債」、「長期未払金」、「退職手当引当金」、「損失補償等引当金」および「その他」に分類して表示します(報告書第132段落)。

(1) 退職手当引当金

退職手当引当金は、退職手当のうち、すでに労働提供が行われている部分について、期末要支給額方式で算定したものを計上します。また、退職手当引当金の計上基準および算定方法について注記することとされています(報告書第135段落)。

(2) 損失補償等引当金

損失補償等引当金は、履行すべき額が確定していない損失補償債務等のうち、地方財政健全化法上、将来負担比率の算定に含めた将来負担額を計上するとともに、同額を臨時損失(損失補償等引当金繰入額)に計上します。なお、前年度末に損失補償等引当金として計上されている金額がある場合には、その差額のみが臨時損失に計上されることとなります(差額法)。計上する損失補償債務等の額の算定は、地方財政健全化法施行規則※1 等に基づく基準によるものとされています。
また、履行すべき額が確定していない損失補償債務等のうち、貸借対照表に計上した額を除く損失補償債務等額については、偶発債務としての注記を行います。なお、議決された債務負担行為額※2 との関係を明確にするため、その総額もあわせて注記します(報告書第136段落)。
損失補償契約に基づき履行すべき額が確定したもの(確定債務)については、貸借対照表に負債(未払金等)として計上するとともに、同額を行政コスト計算書に臨時損失(その他)として計上します。なお、前年度末に負債(未払金等)として計上されている金額がある場合には、その差額のみが臨時損失に計上されることになります(報告書第137段落)。

◆損失補償等債務に係る会計処理
損失補償等債務に係る会計処理

◆(参考)基準モデル、改訂モデルとの主な相違点(固定負債)
(下の図をクリックすると拡大します)

3. 流動負債

流動負債は、「1年内償還予定地方債」、「未払金」、「未払費用」、「前受金」、「前受収益」、「賞与等引当金」、「預り金」および「その他」に分類して表示します(報告書第139段落)。

(1) 未払金と未払費用

未払金と未払費用は、基準日時点で支払義務が確定しているかどうかで区別します。支払義務が確定しているものは未払金として、(一定期間の役務提供などを受けた後)支払う契約はあるものの、基準日時点で支払義務が確定していないものは未払費用として計上します。
報告書において、未払金と未払費用は、それぞれ以下のように定義されています(報告書第141段落、第142段落)。

◆未払金と未払費用の定義
未払金と未払費用の定義

利息や保険料のように、時の経過に伴い費用が発生し、支払い義務が数カ月単位でまとめて発生するような場合、例えば、1月から6月までの発生額をまとめて支払う契約となっている場合には、基準日(3月末)までに発生した額については基準日時点では確定債務となっていないので、1月から3月までに発生した部分について未払費用として計上します。

◆未払費用について
未払費用について

4. 純資産

純資産は、資産と負債の差額として算定されます。報告書では、「資産から負債を控除した正味の資産をいい、租税等の拠出及び当該会計主体の活動等によって獲得された余剰(または欠損)の蓄積残高を意味する」と定義されています(報告書第40段落)。
純資産は、純資産の源泉(ないし運用先)との対応によって、その内部構成を「固定資産等形成分」および「余剰分(不足分)」に区分して表示します(報告書第149段落)。
純資産の構成は基準モデル、改訂モデルのいずれとも異なるものとなっており、比較すると、以下のとおりです。

◆純資産の定義、構成科目(基準モデル、改訂モデルとの比較)
(下の図をクリックすると拡大します)

統一基準において、純資産の内訳科目とされている固定資産等形成分は、資産形成のために充当した資源の蓄積をいい、原則として金銭以外の形態(固定資産等)で保有されます。換言すれば、地方公共団体が調達した資源を充当して資産形成を行った場合、その資産の残高(減価償却累計額の控除後)を意味します(報告書第150段落)。
余剰分(不足分)は、地方公共団体の費消可能な資源の蓄積をいい、原則として金銭の形態で保有されます(報告書第151段落)。余剰分(不足分)には、流動資産(基金および棚卸資産を除く)から将来現金等支出が見込まれる負債を控除した額を計上します。なお、余剰分(不足分)がマイナスとなっている場合、資金の調達を負債に頼らざるを得ない状態となっているといえます。

次回は、行政コスト計算書・純資産変動計算書について解説します。

【注記】
  • ※1 地方財政健全化法施行規則第12条第5号に基づく「損失補償債務等に係る一般会計等負担見込額の算定に関する基準」(平成20年総務省告示第242号)
  • ※2 債務負担行為とは、ただちに支出を伴うものではないものの、将来歳出義務を負う場合に行うものをいい、予算においてあらかじめ定めておく必要のあるものです(地方自治法第214条)。例えば、債務保証契約や損失補償契約を締結しようとするときには、債務負担行為を定める必要があります。

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