サービス
地方自治体経営

デトロイト市の財政破綻
-わが国の地方自治体経営への教訓-

2013.08.08

2013年7月18日、米国・ミシガン州デトロイト市が連邦破産法第9章(地方自治体の債務調整)に基づく破産を連邦破産裁判所に申請しました。負債総額は180億ドル(約1兆8千億円)を超え、全米で最大の財政破綻となりました。

デトロイト市は、米国自動車産業発祥の地であり、最盛期(1950年代)には人口180万人に達していました。しかしながら、自動車産業の衰退とともに税収が減少し、行政サービスが劣化したことから、現在、70万人にまで減少しています。社会資本の毀損も深刻で、7万もの施設(病院、消防署など)が廃墟と化しているとのことです。

破産申請に至る前から、同市では毎年1億ドル規模の財政赤字が続いていました。財政状態の悪化を反映し、市債の格付けも、CC(S&P)やCaa3(Moody's)といった投機的水準にまで下げられています(2013年6月時点)。

デトロイト市の収入と支出を経年比較した<表1>を見ても、近年は財政赤字が続いていたことが見て取れます。

表1 デトロイト市の収支状況(2002年度から2012年度まで)

(下の図をクリックすると拡大します)

出典:デトロイト市アニュアルレポート2012年6月期 統計セクション(非監査)

さらに、<表2>では、デトロイト市と同等の人口規模(70万人程度)を擁する、わが国の地方自治体(岡山市、静岡市および練馬区)を取り上げ、その財政状態などを比較しています。これによると、デトロイト市の収益源の少なさと負債の大きさが際立っていることが分かります。

表2 デトロイト市と同等の人口規模のわが国市区の比較

図2 デトロイト市と同等の人口規模のわが国市区の比較
※収益総額=連結行政コスト計算書「経常収益」+連結純資産変動計算書「財源」
出典:デトロイト市アニュアルレポートより(2012年6月期:1ドル=100円で換算)。岡山市、静岡市、練馬区平成23年度連結財務書類より。

デトロイト市は、財政破綻を避けるため、人件費等の削減、各種部局の民営化など、リストラ策を講じてきました。ミシガン州政府も、各種補助金の増額や市財政の監視を行いました。さらに、2013年3月、州政府はミシガン州地方財政安定化法(以下、州法)に基づき、非常時管理責任者(Emergency Manager)を設置しました。非常時管理責任者と主な債権者(年金基金、銀行など)の間で債務の削減に向けた交渉が決裂し、今回の破産申請に至りました。

デトロイト市は市債を発行しているため、州および地方政府向け会計基準(発生主義会計)に基づき、年次財務報告を公表してきました。同報告のMD&A(市長による財政状態および財務業績の検討と分析)において、市の置かれた苦境が明らかになっています。特に、非常時管理責任者が置かれてからは、市のウェブサイトにおいて財政再建計画や、四半期財政状況報告(直近では2013年4~6月期)が公表されています(いずれも州法が要請)。この点、平常時に作成される年次財務報告等において、同市が破産の兆候を丁寧に説明していれば、財政再建に向けて、もっと迅速な対応がとれたかもしれません。

デトロイト市が経験した外部環境の急激な変化(産業衰退と人口激減)は、わが国の地方自治体においても、もはや対岸の火事ではないと思います。そもそも、わが国の地方自治体には、制度上、地方交付税による財源保障や地方財政健全化法による早期健全化措置があるため、デトロイト市とは状況が異なっています。とはいえ、地方自治体が、税や各種料金を住民などから徴収し、(場合によっては)資本市場において資金を調達している点は、さほど相違はありません。地方自治体は、資金の出し手に対して、提供された資金に基づき健全な自治体行政を行っているか、また、最小の資金で最大の効果を上げているかなど(財政状態および財務業績)を報告すべきです。具体的には、個々の自治体が、自ら財務諸表や財務報告を作成し、主体的にその財政状態および財務業績を住民などの関係者に説明していくことが、今後ますます重要になっていくと考えられます。しかしながら、わが国の地方自治体では、住民などへの説明手段としての財務書類の作成は進んでいるものの、そもそも複式簿記・発生主義に基づく会計が制度化されていません。また、米国におけるようなMD&Aの開示や補足情報の開示なども、まだまだ不十分であり、すでに法令等で要請されている報告との関係を整理しながら、よりいっそう財務情報開示を充実していくことが求められています。


情報量は適当ですか?

文章はわかりやすいですか?

参考になりましたか?