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「公益法人の会計に関する諸課題の検討状況について」(内閣府公益認定等委員会公益法人の会計に関する研究会)を読む!

第3回 財務三基準に関連する事項について(その2)

2016.04.28
非営利デスク
シニアマネージャー公認会計士 松前江里子

内閣府公益認定等委員会から公表された公益法人の会計に関する研究会「26年度報告」は、公益法人を運営する際に必要な事項が記載されています。わかりやすく、全8回に分けて読解していきます。

1. 収支相償と遊休財産規制について

(1) 財務三基準について

財務三基準は、収支相償、公益目的事業比率、遊休財産規制の3つのことをいいます。「収支相償」は、経常収益と経常費用(共に一般正味財産増減)を比べて測定するものです。また、公益目的事業比率は、経常費用全体に対する公益目的事業費の割合で測るものです。さらに遊休財産規制は、遊休財産額(目的の定めのない財産のこと)は公益目的事業費1年分を上限として保有できるというものです。

(2) 収支相償と遊休財産規制と指定正味財産の関係

収支相償と遊休財産規制において、公益法人会計基準上の概念である指定正味財産の概念が取り入れられています。

指定正味財産とは、寄付等によって受け入れた資産で、寄付者等の意思により当該資産の使途、処分又は保有形態について制約が課されている財産額とされています(「「公益法人会計基準」の運用指針)」7、「公益法人会計基準」注解6、公益法人会計基準に関する実務指針(その2)Ⅰ3)。

すなわち、使い道について資金の出し手から制約を受けて受け入れた資産は、公益法人会計基準に従うと、指定正味財産の増加として受け入れ処理を行うこととなります。そのため、一般正味財産の増減をもって測る収支相償の判定からは除かれることとなります。

また、指定正味財産である場合、遊休財産額の計算から除かれることとなる控除対象財産(目的を定めて保有する財産のこと)に該当することとなりますので、遊休財産規制もクリアすることとなります。

(3) 検討課題

指定正味財産は、平成16年会計基準の制定時に導入された概念であり、その後、公益認定制度が新しく導入され、財務三基準が出来たため、必ずしも、これらを考慮して作成されたものではありません。だた、平成20年会計基準においても考え方は踏襲しているため、指定正味財産は、指定正味財産として取り扱うか否かにより財務三基準に与える影響が大きいため、どのような使途の制約があれば指定正味財産と取り扱うかの考え方を明確にすることが検討課題となりました。

2. 指定正味財産の考え方

(1) 使途の制約と解除

指定正味財産の概念を導入した趣旨は、寄付者等からの受託責任の明確化のため、一般正味財産から区分することです。また、使途の制約に従い、受託責任が果たされると制約の解除となりますが、会計処理上は、制約の解除を指定正味財産から一般正味財産への振替処理により示されます。

このような制約と解除の関係から、振替のタイミングがわかるように寄付者の意思により明確に使途に制約がかけられているもののみを指定正味財産として取り扱うべきとの考え方が示されています。

(2) 使途の制約の取扱

使途の制約は、例えば「公益目的事業の〇〇事業に充当してほしい」とか、「奨学金事業の奨学金の財源に充当してほしい」と具体的に表現される必要があると記載されています。また「公益法人のために使ってほしい」では、指定正味財産としては取り扱わない旨の記載があります。

さらに具体的には、以下のような取扱を列挙しています。

  • 複数公益目的事業がある法人へ「公益目的事業のために使ってほしい」との使途の制約で寄付等が行われた場合、どの事業に使用した場合に解除となるか明確でない。そのため、改めて寄付者等の意思を確認する(又は関係者から確認を行う)ことにより明確化ができれば、使途の制約が課されているものと扱うこととなります。
  • 「公益目的事業の○○事業のために使ってほしい」という寄付者等からの使途の制約があった場合には、公益目的事業にすべてを充当することとなるが、事業の実施には、管理費も発生することが予想されるため、例えば、寄付額のうち、一定割合を管理費に充当することを寄付者等に了承を得れば、管理費の財源として充当できると記載されています。
  • 指定正味財産を財源とする基本財産の運用益については、運用益に具体的な使途の制約があるものについてのみ、指定正味財産として取扱うことが適当と記載されています。通常、運用益については発生年度の費用に充当することが期待されている場合が多く、運用益まで指定正味財産とすることは、寄付者等の意思を超える場合も多いと記載されています。

(3) 指定正味財産から一般正味財産への振替

使途の制約が解除された場合について、以下の二つが例示されています。

  • 寄付者等から保有形態を株式等として保有し続けることを指定された場合、この指定正味財産を取り崩して事業に投下することは全く許されないかという点について、明らかにされました。
    すなわち、使途の制約を株式等の保有を続けるということから、株式等を売却して得た資金を同事業に投下していくことに変更した場合に、使途の制約の解除として取り扱うか否かという点が論点であると考えます。結論としては、取り崩しが必要な事情が発生した場合には、再度、意思確認を行うことが必要と示されております。意思確認の結果、寄付者等が使途の制約を同事業に投下するという点で、株式等の保有の継続を売却後の資金の投下に変更することでも同じ使途の制約であると意思表明をしたら、直ちに振替の処理は必要ではなく、事業の実施に従い、資金を投下した時点で振替処理を行うものと考えられます。一方、寄付者等が株式等を保有し続けることが使途の制約と意思表明をした場合には、取り崩して事業に投下することは、寄付者等の意思に従ったものではなくなるため、直ちに振替処理を行うものと考えられます。
  • 寄付者から特定の事業を指定されて寄付を受けた寄付金について、合理的な理由なく支出しない場合には、本来の受託責任が果たせないことから指定正味財産から振替を行うこととなるとの記載があります。具体的には、寄付者から特定された事業を実施しない状況であり、実施しない理由が、受託者である公益法人の責任である場合には、寄付者の意思に従って責任を果たしていないことと判断して、受託責任を果たしていないことを示す会計処理として振替処理を行うものと考えられます。

(4) 指定正味財産に関する平成20年会計基準と実務指針との関係

以上のような検討結果が内閣府の公益法人の会計に関する研究会で議論されましたが、日本公認会計士協会へ実務指針で指定正味財産の考え方を反映することを要請する旨の記載があります。当該要請への対応として、平成28年3月22日に、非営利法人委員会実務指針第38号が公表されているところです。


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