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「公益法人の会計に関する諸課題の検討状況について」(内閣府公益認定等委員会公益法人の会計に関する研究会)を読む!

第4回 区分経理

2016.05.13
非営利デスク
シニアマネージャー公認会計士 松前江里子

内閣府公益認定等委員会から公表された公益法人の会計に関する研究会「26年度報告」は、公益法人を運営する際に必要な事項が記載されています。わかりやすく、全8回に分けて読解していきます。

1. 正味財産増減計算書内訳表における法人会計区分の義務付けの緩和

正味財産増減計算書は内訳表において、①公益目的事業会計、②収益事業等会計及び③法人会計(管理業務やその他の法人全般に係る事項に関する会計)の3つに区分し、さらに①は、事業ごとに表示、②は収益事業とその他事業に分けてから、事業ごとに表示することが認定法ガイドラインⅠ.18に規定されています。

(1) 検討課題

法人会計区分は、この規定に従い、管理費と管理費に充当する財源を明示するために区分して表示することとなりますが、法人会計区分の必要性につき、疑問であることがアンケート等で示されていました。これより法人会計区分の必要性につき改めて検討課題として、法人会計区分の作成を省略することを負担軽減策として提案されました。

法人会計区分を省略した場合、収益事業等を実施する法人についても影響はないかという点と、法人会計区分を省略した場合の管理費の財源はどう考えるかという点について検討されました。

(2) 結論

一つ目の課題について、収益事業等を実施する場合には、その利益の50%を公益目的事業に繰り入れることが法令等で定められているため、法人会計区分を省略した場合、管理費を公益目的事業区分内で表示することとなり、当該繰入額が管理費に充当される可能性が排除できず、影響があることから、利益の繰入を担保するため、公益目的事業のみを実施している場合の法人を適用対象としています。

二つ目の課題について、管理費の財源になり得るものは、法令等で定められたものであるため、法人会計区分を省略した場合には、法令等に従って財源としているかを明示できないこととなります。また、管理費の財源を法令等により区分することの頻雑さも、法人にとって負担になっているのではないかということから、法人会計区分を省略した場合、管理費の財源は管理費相当額とみなすこととなりました。この結果、法人全体の収益から管理費相当額を除いた残りが、公益目的事業に投下されることとなります。

(3) 適用する場合の留意事項

公益目的事業のみを実施している法人は、法人会計区分の省略に当たっては、財務状況の観点と作成の業務量を比較して決めることとなります。すなわち、法人会計区分を省略した場合には、法人が獲得した収入は、管理費相当額を除いて、公益目的事業財産となりますので、公益目的事業以外で余裕分を持ちたいということには対応できないこととなります。なお、法人会計区分を省略しない場合には、法人会計区分での黒字が容認されているため、ある程度(遊休財産額規制まで)公益目的事業以外において財産を保有することができますので、どちらかを法人が選択することとなります。なお、法人会計区分を省略した場合であっても、事業費・管理費の按分計算は必要であり、財務三基準の計算へは影響はありません。

2. 貸借対照表内訳表

収益事業等を実施している公益法人は、収益事業等から生じた利益のうち50%若しくは、50%を超えて公益目的事業財産を繰り入れることが認定法第18条第4号に定められています。このうち、50%を超えて繰り入れる公益法人は、貸借対照表内訳表を作成することとなります(認定法ガイドラインⅠ.18(2)②)。

(1) 検討課題

公益法人の負担軽減の観点から貸借対照表内訳表の作成を省略できないか検討されました。

(2) 結論

公益法人は、今後も継続して国民に対して説明責任を果たすためには、貸借対照表内訳表の作成はやむを得ないため現状通りとの結論を得ています。

報告書によると、いくつかの意見が紹介されており、公益目的事業へ繰り入れがなされているかを確認する資料としての役割であれば、法人税法上の区分経理表で代替可能ではないかという意見、一方、複式簿記の考え方からは、繰入額が正しく算定されているかは、貸借対照表内訳表の金額と合わせて確認するべきという意見がありました。

3. 正味財産増減計算書内訳表の正味財産残高

正味財産増減計算書内訳表の正味財産残高の表示方法について、記載方法が明示されていません。実務上は、会計区分ごと、あるいは事業区分ごとに正味財産残高を記載しています。

(1) 検討課題

運用上、正味財産残高の記載について平易にできるか、その記載方法はどうかという点について検討されています。

(2) 結論

財務三基準の算定上、影響のあるものは現状ないという判断で、貸借対照表の単位ごとに期首及び期末正味財産を表示すれば足りるとの結論です。すなわち貸借対照表内訳表を作成していない場合には、法人全体での合計額の正味財産残高を記載して、貸借対照表内訳表を作成している場合には、公益目的事業会計区分、収益事業等会計区分、法人会計区分の会計単位区分ごとに正味財産残高を記載することになります。

4. 他会計振替

公益法人会計基準の運用指針12.財務諸表科目の取扱要領に「他会計振替額」は、正味財産増減計算書内訳表に表示した収益事業等からの振替額と記載されています。報告書では、他にも利用可能な場合の考え方を示しています。

他会計振替が可能な場合は、以下の①から④の4つが示されています。なお、各会計区分間での振替を意味している科目が他会計振替額です。

① 収益事業等の利益⇒公益目的事業会計へ振替
② 法人会計の剰余金⇒公益目的事業会計へ振替
③ 収益事業等の利益⇒法人会計へ振替
④ 法人会計の剰余金⇒収益事業等会計へ振替 

4つのうち、公益目的事業会計への振替については、法令等で根拠が明確になっています。①については、認定法第18条第4号を根拠として、公益目的事業財産に繰り入れることが定められており、法令等に従った振替を示しています。また②については、認定法施行規則第26条第8号を根拠として、公益目的事業財産に繰り入れる場合の振替を示しています。なお、認定法の趣旨より、公益目的事業会計から収益事業等会計への繰入、公益目的事業会計から法人会計への繰入は不可能となっています。


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