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「公益法人の会計に関する諸課題の検討状況について」(内閣府公益認定等委員会公益法人の会計に関する研究会)を読む!

第6回 適用する会計基準

2016.06.03
非営利デスク
シニアマネージャー公認会計士 松前江里子

内閣府公益認定等委員会から公表された公益法人の会計に関する研究会「26年度報告」は、公益法人を運営する際に必要な事項が記載されています。わかりやすく、全8回に分けて読解していきます。

1. 法人類型ごとの適用する会計基準の明確化

公益法人、移行法人、公益目的支出計画を完了した一般法人、新規設立で公益認定申請を予定している一般法人、公益認定申請を予定していない一般法人といくつか法人類型が考えられます。平成20年12月の公益法人制度改革による移行措置のため、複数の法人形態に分かれることとなり、法人ごとに法律上の定めや監督等の取扱が異なっています。

また、平成16年公益法人会計基準も移行期間においては、移行の円滑化の観点から実態に合ったものとして、必要な提出書類が提出されていれば、適用が可能であったことから、旧特例民法法人のために制定されていた同基準を引き続き適用されている法人も存在している状況が伺えました。研究会は、この点も合わせて、移行期間終了を踏まえ、考え方を示すこととなったと考えられます。

(1) 法人が会計基準を選択する際の考え方

上記に記載の法人は、それぞれの法律に従い運営される法人でありますが、共通する法律は、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「法人法」という)であり、会計基準に関しては、「一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする」と規定されています。ここでいう会計の慣行として考えられるもののうち、選択の可能性があるものとして、公益法人会計基準(※)、企業会計基準などが考えられます。

報告書では、非営利法人であることを踏まえ、通常は、公益法人会計基準を企業会計基準より優先して適用することになるものとの考え方を示しています。 加えて、移行法人については、支出計画期間中の法人、完了した法人ともに平成20年会計基準の適用がよい旨を示しています。

ただし、あくまでも考え方であるため、一般法人の中には、企業会計基準を適用したほうが、より法人の状況を説明するためにわかりやすい場合には、企業会計基準を適用することも一つの考え方であり、法人の意思表明であると理解することができます。

(※)公益法人会計基準は、文書の意図より平成20年会計基準を示していると考えられます(以下も同じ)。

(2) 平成16年会計基準の適用についての整理

平成16年会計基準は、改正前民法第34条の社団法人・財団法人のために策定された会計基準であり、現行制度上の社団法人・財団法人を前提とする会計基準ではないものです。そのため、報告書では、平成20年会計基準に切り替えることを促進しています。法人が会計基準を切り替えるために、必要な情報として両会計基準の違いを明らかにすることを、日本公認会計士協会に依頼しています。

(3) 「公益法人会計基準に関する実務指針」での整理

日本公認会計士協会では、内閣府からの依頼により、非営利法人委員会実務指針第38号「公益法人会計基準に関する実務指針」(平成28年3月22日)を公表しており、(2)に記載の両会計基準の違いを含め関連する内容を説明しています。具体的には、Q&Aの形式で以下①~④の内容を説明しています。

  • 社団法人・財団法人には、どのような会計基準の適用が想定されるか。
  • 平成20年会計基準を適用する社団法人・財団法人には、どのような法人類型と監査対象となる財務諸表等があるか。
  • 公益法人会計基準について平成16年会計基準と平成20年会計基準の主な違いは何か。
  • 移行法人以外の一般社団・財団法人が平成20年会計基準を適用した場合、正味財産増減計算書内訳表を作成する必要があるか、その考え方は何か。

特に、①~④のうち、依頼事項である③の事項では、両者の違いを示す項目として、事業単位の会計区分、財産目録、附属明細書、棚卸資産の評価方法、関連当事者の範囲について説明しています。

2. 公益法人会計基準に明示されていない新たな会計事象への対応

研究会発足時に、日本公認会計士協会から要望として、公益法人会計基準に記載のない事項で、企業会計基準に適用が定められているものの取扱について明示してほしい旨の要望が提出されていたことに対応したものになっています。

この要望は、平成16年会計基準適用時の考え方が、記載のない会計基準については、企業会計基準を参考にするという会計慣行になっていたところ、現在、企業会計は改正が頻繁に行われていること、また非営利法人会計の概念フレームワークの検討も進んでいることから、この考え方のままでよいかという点も踏まえ、要望されているものと考えられます。

(1) 検討の視点

現在、社会的な環境変化に最も対応している企業会計基準をベースとして公益法人会計基準において対象法人としている公益法人に適用しない場合のメリット、デメリットを視点として継続的に検討をしていくことが示されています。

(2) 結論

今回の報告書では、具体的に個別の会計基準についての適用の可否までの検討はなされず、公益法人会計基準が新たな会計事象に対応するため、どのような方針及び体制で検討を継続していくかということを結論として記載しています。上記(1)の視点を方針として、適用することが適当な会計基準であるか否かを研究会で決定します。適用が決定した個別の会計基準は、具体的な適用方法についての検討を①研究会が引き続き検討するもの、②研究会の結論・方向性を日本公認会計士協会に伝え、具体的な検討を依頼するものに分けて導入することが記載されています。

(3) その後の検討状況について

上記(2)の結論により、平成27年度における研究会にて、個別の会計基準の適用の可否について検討がなされています。検討の課題となりました個別の会計基準の項目は以下の通りです。

  • ① 退職給付に関する会計基準
  • ② 金融商品に関する会計基準
  • ③ リース取引に関する会計基準
  • ④ 棚卸資産の評価に関する会計基準
  • ⑤ 工事契約に関する会計基準
  • ⑥ 資産除去債務に関する会計基準
  • ⑦ 賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準
  • ⑧ 会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準
  • ⑨ 固定資産の減損に係る会計基準

これらにつき、公益認定等委員会から日本公認会計士協会へ実務家の観点から、公益法人へ適用した場合の影響等に関する意見を求めています。研究会では、日本公認会計士協会から提出された意見を参考に検討を重ね、平成28年3月23日付で「平成27年度 公益法人の会計に関する諸課題の検討結果について」を公表しています。「26年度報告」において、研究会と日本公認会計士協会が連携する旨の記載が明確に示されており、継続的に連携した対応がなされていることが伺えます。

3. 制度と会計基準の分離

研究会発足時の要望の中に、公益法人会計基準は、法制度の遵守基準と融合した精緻な会計基準であり、行政庁にとっては、便利な基準であるが、一般の利用者にとっては、理解が容易でない会計基準であるため、制度上の要請と会計基準を分離することが挙げられていました。

(1) 検討の視点

制度の仕組みは、公益認定法の考え方が、会計基準、運用指針、認定法ガイドラインという制度運用上、必要な規定の中に組み込まれたものとなっています。制度の仕組みを根本的に見直すことは難しいため、会計基準が財務諸表作成上のルールであることを踏まえ、財務諸表ごとに検討することとされています。検討した項目は、貸借対照表内訳表の作成の簡便化、財産目録の使用目的等欄の記載の簡便化です。

(2) 結論

個別に検討した結果、どちらも制度上必要な事項が財務諸表に反映されていることから、分離を前提として議論することは難しいとの結論が示されています。そのため、研究会では、制度との関連において、負担軽減が図れないかという前提に切り替えて検討をすることとしています。

4. 小規模法人について

公益法人は、全国で9,414法人(平成28年2月末現在)ありますが、多数の法人が職員1、2名の小規模な法人であります。報告書では、事業規模の小さい法人を小規模法人といっています。実態として、公益認定制度は、このような体制の脆弱な法人において本当に実行していけるのかという意見が多く、最優先課題として検討されることとなりました。

(1) 検討の視点

公益法人は、他の非営利法人と比べて、手厚い税制優遇を受けており、社会的な存在意義の大きい法人として認識されているものと考えられます。一方、公益認定制度の実行において、事業規模の実態に比べて認定基準が過大な負担になっているとの懸念もあり、税制優遇と実行可能性という両者を踏まえた検討を行っています。

(2) 結論

小規模法人の定義をはじめ、小規模法人に限定した負担軽減策を検討されてきましたが、小規模法人を定義することは難しいとの結論とされています。経常損益や資産規模、職員数等の複数の定量的条件、加えて法人の自己規律に関する事項等の定性的条件も広く検討された結果、決定的な根拠を見出せなかったためです。ただし、何等かの負担軽減策を取りたいという研究会の総意があり、小規模法人に対象を限定せず、公益法人全体としての負担軽減策を取る方向でまとめられています。負担軽減策としてまとめられた事項は、先に解説いたしました「収支相償の剰余金解消計画の1年延長」(第2回で解説)及び「正味財産増減計算書内訳表における法人会計区分の義務付けの緩和」(第4回で解説)の2項目です。また、当初、小規模法人に限定して検討されていた「重要性の原則の適用」及び「事業費・管理費の配賦方法の簡便適用」の2項目については、今まで通りの運用になることが明記されました。


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