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「公益法人の会計に関する諸課題の検討状況について」(内閣府公益認定等委員会公益法人の会計に関する研究会)を読む!

第8回 定期提出書類(別表H)とまとめ

2016.06.23
非営利デスク
シニアマネージャー公認会計士 松前江里子

内閣府公益認定等委員会から公表された公益法人の会計に関する研究会「26年度報告」は、公益法人を運営する際に必要な事項が記載されています。わかりやすく、全8回に分けて読解していきます。

1. 定期提出書類(別表H)について

公益法人が公益目的事業にどの程度の財産を投下しているかを数値で示したものが別表Hです。公益目的事業に投下した財産は、公益目的事業財産であり、認定法及び認定法規則で財産となり得るものが列挙されています。通常は、公益目的事業会計に投入された収入と費用で測定されます。

(1) 論点

公益目的事業会計で赤字が発生して、公益目的事業財産以外の財源で赤字を補てんした場合、赤字補てんした財産が公益目的事業財産に含まれるか否かにつき、法令等の解釈が分かれており、別表H作成上の論点となっています。

(2) 結論

赤字補てんした財産は、認定法第18条第8号に基づく認定法施行規則第26条第8号で規定されている定款又は社員総会若しくは評議員会において、公益目的事業のために利用し、又は処分する旨を定めた額に相当する財産に該当するとの考え方があります。一方、認定法第30条第2項第3号において、公益目的事業財産以外の財産について公益目的事業のために費消、譲渡した場合には、公益目的取得財産残額から控除するものと規定があり、赤字補てんは、これに該当するという考え方があります。研究会では、前者の考え方を結論としています。なぜならば、区分経理の考え方の趣旨に、公益目的事業の事業活動は、極力、公益目的事業会計で表されることが必要であるとの考え方があるからです。これにより、公益目的事業会計に区分された財産は、基本的には、認定法第18条における公益目的事業財産に該当し、該当しないものはごく例外的と考えられています。

具体的には、当該補てんのための金額は、一度公益目的事業会計に移動されてから、支出されていると考え、会計上は、他会計振替額で他の区分から移動させることになります。別表Hにおける公益目的取得財産残額には、当該赤字補てん相当額を含むことになります。

なお、もう一方の考え方によると、公益目的取得財産残額には、赤字補てん相当額を含まないことになります。
研究会での結論を参考に今後、別表Hの計算方法が明らかにされていくものと考えます。

2. 公益法人会計基準適用について(アンケートの結果を踏まえて)

内閣府では、平成25年7月に、公益法人又は一般法人に移行済みで、移行後の計算書類を作成したことのある法人を対象にアンケートを実施しました。対象法人数は、2,429法人で、有効回答数は、1,498法人(61.7%)です。アンケート項目は以下の4項目でした。

  • 貴法人におかれましては、いずれの会計基準を適用されていますか。
    理事会、社員総会、評議員会での説明等、内部管理用として日常使用する会計基準と国民への開示や行政庁への提出の際に使用する会計基準とは同じですか。
  • 仮に、今後1、2年の間に、16年会計基準や企業会計基準などから20年会計基準への切り替えを行うこととした場合に、どの様な事が支障になりますか。
  • (20年会計基準を適用している法人のみ)20年会計基準を適用されていて、改善したほうがよいと考えられる点を記載してください。

(1) アンケートの結果について

  • 20年会計基準を適用している法人数が全体の94.1%でした。
  • 同じものを作成している法人数が、全体の95.5%でした。
  • 支障がある法人4.4%、支障がない法人81%、わからない法人14.6%でした。
  • 20%の法人が改善したほうがよい点を回答しています。複数回答があった項目のうち、主なものを示すと以下の項目になります。
    • 小規模法人に簡便法はないのか。
    • 企業会計基準を適用したほうがよい。
    • 区分経理、法人会計区分は不要ではないか。
    • 費用の配賦方法を簡素化してほしい。
    • 資金収支ベースの資料のほうがわかりやすい。

(2) アンケート結果について

(1)に示した内容がアンケートの結果となります。平成20年会計基準を原則的な会計基準として今後、会計処理をしていくことになるため、適用状況を確認したものと思われますが、ほとんどの法人が適用していることが確認されています。また、適用している法人の約20%が改善点を示していますが、挙げられた項目については、研究会の検討課題とされており、既に対応されているものと考えられます。

3. FAQについて

平成20年会計基準の適用について、2に示したアンケートを実施した結果、94%の法人が適用済みであります。また、移行期間も終了した現在においては、移行審査は既に終了していることから、移行に関するFAQは、廃止か見直しを必要とする旨の記載があります。

(1) 廃止又は見直しされたFAQ

問6-3-1、問6-4-1~6、問6-5-4について廃止、問6-1-2~3、問6-1-6、問6-3、問6-5-3については、内容が見直されています。

(2) 追加されたFAQ

区分経理についてのFAQが問6-2-5~7、問6-4に追加されています。当該報告書に記載の内容をわかりやすくFAQとして公表していますので、実務を行う上での参考になるものと考えます。

4. まとめ

「26年度報告」について、全8回に分けて解説しました。すなわち、第1回(平成28年4月12日掲載)では、報告書の位置づけとして、研究会の発足時の立て付け、検討内容の紹介、報告書の適用関係のほか、公益法人会計基準の設定主体にも言及し、報告書の概要を解説することにより、報告書の捉え方の参考としていただきたい内容を示しました。

第2回(平成28年4月21日掲載)及び第3回(平成28年4月28日掲載)では、公益法人が毎年度提出することが義務付けられている定期提出書類の中で、会計に関する部分である財務三基準に関連する事項を取り挙げました。項目は、収支相償の剰余金解消計画の1年延長について、収支相償の剰余金の解消理由、収支相償と遊休財産規制、指定正味財産の考え方について解説いたしました。定期提出書類を作成する上での考え方の参考になれば幸いです。

第4回(平成28年5月13日掲載)では、区分経理として関連する項目である、正味財産増減計算書内訳表における法人会計区分の義務付けの緩和、貸借対照表内訳表の作成の省略の可否について、正味財産増減計算書内訳表の正味財産残高の表示方法、他会計振替の使い方について解説いたしました。内訳表については、必ず必要となりますが、その中でも記載不要とされる部分の考え方を明示しました。

第5回(平成28年5月20日掲載)では、財産の表示等として、控除対象財産と財務諸表、実施事業資産と財務諸表、財産目録と表示等で、全てが財務諸表上の数値を前提に作成していることがわかるよう、法律等における概念と財務諸表との関連について解説しました。

第6回(平成28年6月3日掲載)では、適用する会計基準として、認められた様々な法人形態をもつ法人が存在する中で、一律に適用する会計基準は、明示されず、一般に公正妥当な会計の慣行と言われる中で、適用することが望ましいと思われる会計基準を記載しています。法人類型ごとの適用する会計基準の明確化、公益法人会計基準に明示されていない新たな会計事象への対応、制度と会計基準の分離、小規模法人について解説しました。

第7回(平成28年6月10日掲載)では、会計処理に関する事項として、事業費と管理費の考え方、有価証券(満期保有目的の債券)の会計処理方法について解説しました。加えて、資金収支の情報について、財務諸表との関係を含めた記載の考え方を示しました。

第8回では、定期提出書類の中の別表Hの考え方、公益法人会計基準適用について(アンケート結果を踏まえて)、FAQについて解説しました。
ここでの解説が、公益法人が日々の会計処理、年度末作成の財務諸表と定期提出書類の理解の一助になれば幸いです。


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