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情報センサー2017年新年号 会計情報レポート

固定資産の減損会計の実務ポイント解説シリーズ
第3回 共用資産、のれんに関する実務論点

会計監理部 公認会計士 加藤圭介
品質管理本部 会計監理部において、会計処理および開示に関して相談を受ける業務、ならびに研修・セミナー講師を含む会計に関する当法人内外への情報提供などの業務に従事。主な著書(共著)に『業種別会計シリーズ 自動車産業』(第一法規)などがある。

Ⅰ はじめに

固定資産の減損会計に関する本シリーズの第3回である本稿では、共用資産およびのれんに関する実務論点を取り上げます。通常の固定資産が資産または資産グループ単位で減損会計を適用するのに対し、共用資産およびのれんは原則としてより大きな単位でグルーピングを行う点に特徴があります。なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りします。

Ⅱ 共用資産、のれんに関する実務論点

1. のれんと共用資産の共通点、相違点

(1) 共通点

のれんと共用資産はいずれも、減損の認識に当たっては、帰属する、あるいは関連する複数の資産または資産グループにのれんまたは共用資産を加えた大きな単位で行います。この場合、のれんまたは共用資産を加えることによって算定される減損損失の増加額は、原則として、のれんまたは共用資産に配分します。
なお、のれんと共用資産はいずれも、その帳簿価額を関連する資産または資産グループに合理的に配分できるときは、資産または資産グループにのれんや共用資産の帳簿価額を配分した上で減損の認識の判定を行うことができます。ただし、この場合の減損損失の配分方法は、のれんと共用資産とで異なります。

(2) 相違点

のれんについては、複数の事業を一括して取得する場合、帳簿価額を合理的な基準に基づき分割することになりますが、共用資産については、取得時に帳簿価額を各資産グループに分割するといった取扱いはありません。また、のれんは独立してそれ自体で減損の兆候があるかどうかを判断することはできませんが、共用資産については著しく早期に処分する場合や、用途変更、遊休状態、著しい陳腐化、著しい市場価格の下落等がある場合に、共用資産自体に減損の兆候があると判定される点で異なります。(<表1>参照)

(下の図をクリックすると拡大します)

2. 連結財務諸表上ののれんの減損の兆候を判断する際、のれん償却費を加味するのか

子会社の株式を取得し連結の範囲に含めることにより、連結財務諸表上で投資と資本の消去差額としてのれんが計上されます。当該のれんの償却額は、子会社の個別財務諸表では計上されませんが、連結財務諸表上ののれんの減損の兆候を判断する際には、それを加味した営業損益にて判断をする必要があります。
連結財務諸表上ののれんの減損の兆候を判断するに当たり、営業損益が連続してマイナスかどうかを判定する際には、のれんの帰属する事業の連結財務諸表上の営業損益が連続してマイナスかどうかで判断することになります。のれんは取得した子会社を構成する事業に帰属するため、まずは、当該子会社の個別財務諸表における減損の兆候の有無を基礎とするものの、連結財務諸表上のグルーピングの見直し、連結時の資産の時価評価に伴う減価償却費の修正、未実現利益の消去、連結財務諸表上ののれんの償却費などを加味した営業損益が連続してマイナスかどうかで減損の兆候の有無を判断することとなります。例えば、取得した子会社の事業が個別財務諸表上では連続して営業利益の場合であっても、連結財務諸表上ののれん償却費を加味した場合に連続して営業損失となる場合には、のれん未償却残高に回収不能な部分が存在する恐れがあるため、のれんの減損の兆候があると考えられます。

3. 連結財務諸表上ののれんを減損処理した場合、子会社株式の減損処理が必要となるのか

(1) 子会社株式が上場株式の場合

上場子会社株式については、時価が取得原価と比べて著しく下落した場合には、時価が取得原価まで回復することを合理的に証明できる場合を除き、子会社株式の減損処理が行われることとなります(金融商品に関する会計基準第20項)。連結財務諸表上ののれんの帰属する資産グループに減損の兆候があり、のれんの減損処理が行われた場合であっても、子会社株式の時価に著しい下落がないときは、子会社株式は減損されないこととなります。

(2) 子会社株式が非上場株式の場合

① のれんを減損した場合の非上場子会社株式の減損

非上場子会社株式は、実質価額が取得原価と比べて著しく下落し、かつ、実質価額が取得原価まで回復する見込みがない場合に減損処理が行われることとなります(金融商品に関する会計基準第21項)。非上場子会社株式に係る連結財務諸表上ののれんについて、その帰属する資産グループに減損の兆候があり減損損失が計上される場合には、非上場子会社株式の取得原価を構成している超過収益力の毀損(きそん)により実質価額が著しく低下するとともに、収益性の低下に伴い実質価額の取得原価までの回復見込みがなくなることにより、非上場子会社株式の減損処理が行われる場合が多いと考えられます。
一方、連結財務諸表上ののれんについては、帰属する事業に分割されて減損判定が行われます。例えば、のれんをX事業とY事業に分割した場合、X事業に帰属するのれんについては減損損失が計上されますが、Y事業に帰属するのれんについては減損の兆候がなく超過収益力が維持されているといったこともあり得ます。
これに対して非上場子会社株式の減損判定は、子会社株式の取得原価を構成する超過収益力を帰属する事業に分割して判定するわけではなく、当該子会社全体の実質価額で判定します。このため、例えば当該子会社のX事業の超過収益力が毀損しても、Y事業の超過収益力が十分にある場合には、非上場子会社株式の実質価額の著しい低下に至らないことや、実質価額が取得原価まで回復することを合理的に証明できることにより、非上場子会社株式の減損が行われないことも考えられます。

② 非上場子会社株式を減損した場合ののれんの一時償却

個別財務諸表上、非上場子会社株式の減損処理がされた場合には、のれんの一時償却の要否についても検討する必要があります。連結財務諸表上の子会社投資簿価(子会社の資本の親会社持分額+のれん未償却残高)が減損処理後の非上場子会社株式の帳簿価額を超過することとなる場合、当該超過額のうち、のれんの未償却残高に達するまでのれんを一時償却する必要があります(連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針第32項)。このため、例えば子会社のX事業ののれんを減損し、Y事業ののれんを減損していない状況においても、Y事業ののれんの未償却残高に対し一時償却が必要となるケースも想定されます。なお、のれんを一時償却した場合は、連結損益計算書上、原則として販売費および一般管理費に「のれん償却額」として計上することとなります(連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針第32項、連結財務諸表規則ガイドライン55)。